日産は「方向性見失っていた」 米州トップが回顧日産アメリカズのクリスチャン・ムニエ会長
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【フランクリン(米テネシー州)】日産自動車の米州事業を担う日産アメリカズのクリスチャン・ムニエ会長(58)は、年初に事業を引き継いだ際、同社は方向性を見失っていたと述べた。

 ムニエ氏はインタビューで、「進むべき明確な指針がなかった。ビジョンもなかった。方向性すらなかった」と語った。

 日産は意思決定が遅く、米国市場における地位の低下という状況に慣れきってしまっていたとも指摘した。そのため、ムニエ氏が最初に講じた施策の一つがテネシー州の本社に勤務する従業員に週4日の出社を命じたことだった。同氏は、在宅勤務では協働が「極めて困難」で、問題は未解決のまま放置されることが多いと説明した。

 しかし、約10年に及ぶ日産の低迷を逆転させるためには、さらなる措置が必要だ。日産が先月発表した決算は5四半期連続の赤字を計上。同社は世界全体で17工場のうち7工場を閉鎖し、2万人の人員削減を行う大規模なリストラを進めている。

 長年にわたり日産の最高経営責任者(CEO)を務めたカルロス・ゴーン氏が2018年に逮捕されて以降、日産は進むべき方向を見いだせず苦戦を強いられている。日本第3位の自動車メーカーとしての窮状は深刻化し、日本政府は昨年、競合するホンダとの経営統合を推奨したが、交渉は決裂した。

 ムニエ氏の責務は、最大の市場である米国での業績回復だ。業界調査会社コックス・オートモーティブのデータによると、日産の米販売台数は約40%減少しており、市場シェアはピークだった17年の8.4%から6.4%に縮小している。また、同社の販売代理店は競合他社より高い在庫水準に圧迫されており、販促やメーカーボーナス獲得のため頻繁な値引きを余儀なくされている。

 S&Pグローバル・モビリティの自動車アナリスト(北米担当)のステファニー・ブリンリー氏は「日産の製品に価値がないわけではない。ただ、安価な選択肢だと消費者に刷り込んでしまっている」と指摘。「入手可能な範囲の中で最も安く、最もお得な価格であることは、必ずしも期待するほど顧客ロイヤルティーを生むとは限らない」と語った。