総予測2026Photo by Masato Kato

経営再建中の日産自動車。2025年4月に就任したイヴァン・エスピノーサ社長は、工場閉鎖などのリストラ策を進めてきた。同時に、日本、中国、米国を拠点にした稼ぎ方を追求。これから中国勢と組んでどう稼ぐのか。リストラを経てどのような復活シナリオを描くのか。特集『総予測2026』の本稿では、エスピノーサ社長を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)

中国のパートナーである東風汽車と
中国生産車を中国の外へ輸出する

――2025年に中国国内で発売したEV「N7」が大ヒットしています。中国で学んだ知見や技術をどう全社に広げていきますか。

 東風汽車と合弁会社を組んでいますが、スピード、技術、コスト競争力があります。この3要素があるため、中国勢は強いのです。

 ただ、中国勢には「歴史」がありません。日産自動車の強みは、歴史に加えて、保有台数や世界中にある販売網です。

 私がやろうとしていることは、(東風と)中国で持っているスピード、技術、コスト競争力を生かした商品を中国以外で販売し、中国メーカーに対抗するというものです。また、多くの日産のエンジニアが中国の合弁会社で仕事をしています。彼らが学んだノウハウを本社に持って帰ってきてもらい、共有することも重要です。

――中国生産車を輸出する計画を進めています。

「N7」だけでなく、中国で販売する複数モデルを輸出しようとしています。仕向け地の候補は、中国勢に対抗しなければならない地域。具体的な国を申し上げる段階ではありませんが、南米や東南アジア、中東あたりです。

――タイでは中国勢のEVが躍進していて、日系メーカーの牙城が崩されています。N7の輸出先としてぴったりではないですか。

 検討してみますよ(笑)。

――25年4月の社長就任以降、経営再建計画を進めています。工場閉鎖や人員削減などコスト削減の施策には見通しがついています。浮上の鍵は新商品です。収益にどれほどポジティブな効果がありますか。

 再建計画では、販売台数増に頼っていません。新商品の投入は、販売台数の安定化に寄与します。あまり台数増はできないかもしれないけれど、台数減には歯止めをかけられると考えています。

――25年度(26年3月期)は、2750億円の営業赤字の見込みです。日産が黒字化を達成するために、台数と収益のバランスをどうかじ取りしていきますか。

次ページでは、エスピノーサ社長が北米で黒字なのに日本で赤字になっている理由とともに、リストラを経ての復活シナリオについて詳細を語る。販売台数と収益のバランスをどのように取っていくのか。リストラで新商品の利益率はどう変化するのか。