『無能なリーダーは「成果が出ないのはメンバーの能力不足のせい」と考える』
そう指摘するのが、400以上のチームを見て「人と協力するのがうまい人の特徴」をまとめた書籍『チームプレーの天才 誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること』(沢渡あまね・下總良則著、ダイヤモンド社刊)だ。「チームの空気が変わった」「仕事仲間との関係性が良くなった」と話題の一冊から、その考え方について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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成果が出ない原因を“能力”だと決めつけていないか
無能なリーダーの特徴。それは、仕事の成果が出ない部下を「能力ややる気が足りていない」と決めつけることです。
「なんでこんな簡単なことができないの?」
「真面目にやる気がないの?」
リーダーとしては純粋な問いのつもりでも、部下としては頑張っているつもりであれば、こう言われたところでどうしようもない。
結果、本当に意欲が下がり、自身を追い詰め、行動も成長も止まってしまいます。
成果が出せない人に「本当に足りていないもの」
部下やチームのメンバーが思うように結果を出せていないとき、まず疑うべきは「能力」ではありません。
『チームプレーの天才』の著者、沢渡あまねさんは、こう話しています。
“能力 × 体験(経験)= 価値”
単に体験・経験が足りないだけかもしれません。
ならば体験(疑似体験含む)や経験を増やそう。
リーダーの多くは、成果が出ない原因をすぐ「能力」に結びつけてしまいます。
けれど、そもそも必要な“体験”を積んでいなければ、誰であっても成果は出ません。
書籍『チームプレーの天才』の中にも、リーダーの役割の1つとして、このように書かれています。
ゴールや目的を達成するために必要な体験をすること。組織やマネージャーにおいては、チームのメンバーに必要な体験を獲得してもらう(または尊重する)こと。
――『チームプレーの天才』(146ページ)より
新しい仕事に取り組む場合はなおさらです。
「そもそも自分にできるのだろうか」「このメンバーでできるんだっけ?」と、疑問が湧きます。
初めてやる仕事は、頭で考えていてもよくわからない。だから「ピン」と来ない。「できるだろうか?」と不安になるのです。
その背景の一つに、体験不足が挙げられます。
要するに、「やったことがない」から、不安になる。できない。それは当然のことですよね。
リーダーが取るべきアクションとは
では、どのような体験が必要なのか。
同書では、以下のような具体的な方法が語られています。
・対話できる場をつくる
・まずは小規模で始める
・外にある「場」に出向いてみる
・1人よりも「みんな」で体験する
・プロトタイプを作ってみる
とくに強調されているのが、社内だけでなく、社外の「他者」との関わりの重要性です。
同書は『BLENDED LEARNING』という本で紹介されている「70:20:10の法則」を引用して、以下のように説明しています。
これは、アメリカの調査機関ロミンガーによって明らかにされた法則です。同社の調査結果によると、成果に結びつく学びの70%は日常の仕事での経験、20%は仕事での他者との関わりによる経験、そして残りの10%は企業研修などのフォーマルラーニングによって培われる学びだといいます。
――『チームプレーの天才』(146ページ)より
通常業務における学びだけで成果が出るわけではない、ということです。
通常業務だけでは学べないことを言語化し、外部研修を受ける、社外活動に参画するなど、手段を講じることが重要です。
業務を通じた学びをOJT(On the Job Training)、業務外での学びをOFFJT(OFF the Job Training)と呼びます。
それぞれのバランスを意識して、学びの設計をしてあげることが、リーダーの役割です。
それもせずに、いつまでたっても「部下の能力不足」を嘆いているだけでは、職務怠慢と言われてもしかないでしょう。
「能力」の不足より、「体験」の不足を疑おう
体験を積み、学びの場を提供しても変化がない――。
そのときに初めて、能力の側面を検討します。
ですが、リーダーがまずやるべきなのは「能力不足を責めること」ではなく、学びを得るための体験を設計してあげることなのです。
疑うべきは能力ではなく、「必要な体験が不足しているのでは?」という視点です。
・体験を増やす
・学びを設計する
・それでもダメなら能力開発を考える
この順番こそが、部下に成果を出させてあげるための“適切なロジック”です。
部下が「できない」のは能力がないからではなく、まだ“体験していない”からかもしれない。
その視点さえ持てれば、リーダーとメンバーの関係は驚くほど変わり、チームの成果も自然と上向いていくことでしょう。
(本稿は、『チームプレーの天才 誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること』の内容を引用したオリジナル記事です)







