『無能なリーダーはメンバーに「主体的」であることを押し付ける』
そう指摘するのが、400以上のチームを見て「人と協力するのがうまい人の特徴」をまとめた書籍『チームプレーの天才 誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること』(沢渡あまね・下總良則著、ダイヤモンド社刊)だ。「チームの空気が変わった」「仕事仲間との関係性が良くなった」と話題の一冊から、その考え方について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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「主体性を持て」と言うだけのリーダーがチームを弱くする
職場にいますよね。
「もっと主体的に動けよ」「指示待ちじゃダメだ」と言葉だけを投げてくるリーダー。
しかし、よく考えてみてください。
主体性を発揮した経験がない人に、“主体的に動け”と言っても動けるはずがない。
自転車に乗ったことのない人に「もっとバランスを取れよ」と言うようなもの。
にもかかわらず、言葉だけで主体性を求めるリーダーは少なくありません。
結果、メンバーは萎縮し、自信を失い、チーム全体が停滞してしまいます。
優秀なリーダーは「ハンドルを握る体験」をつくる
優秀なリーダーは“主体性”を押し付けません。
代わりに、主体性が自然に芽生える「体験」を設計するのです。
『チームプレーの天才』という本では、こう語られています。
常に顧客や上位者から指示命令を受けて仕事をしている人たちや、誰かに決めてもらって動く仕事がメインの人たちこそ、自分たちで意思決定をして行動する体験を増やしましょう。私はそれを「自分でハンドルを握って運転する体験」と呼んでいます。
――『チームプレーの天才』(181ページ)より
具体例としては、
・定例会議の司会進行を若手に任せる
・一部の意思決定を主任や担当者にゆだねる
・新しいシステムの要件定義に運用担当者を巻き込む
・残予算の使い道を担当者だけで決めてもらう
いずれも、「誰かの指示で動く側」だった人が自分で動き方を決める経験を積む機会です。
主体性とは“叱咤”で生まれるものではなく、“設計”で育てるもの。
これこそが、強いチームをつくるリーダーだけが知っている本質です。
本当に優秀なリーダーは「自分のハンドル」さえ手放す
さらに重要なのは、リーダー自身の姿勢です。
『チームプレーの天才』にはこのようにも書かれています。
反対に、指揮命令する立場が長い経営層や管理職やリーダー、あるいは発注者の立場が強い企業の人たちは、むしろ運転席を降りる体験、すなわち助手席や後部座席に乗る体験をした方がよいかもしれません。
――『チームプレーの天才』(182ページ)より
強い立場にいるほど、弱い立場の感覚が見えなくなる。
だからこそ、
・主役ではなく脇役として動く
・イチ担当としてプロジェクトに入ってみる
・フォロワーとして誰かを支える
といった“鎧を脱ぐ体験”が必要だといいます。
リーダーがハンドルを手放し、メンバーに握らせる。
その瞬間に、チームの主体性は生まれ、加速します。
無能なリーダーは“言葉で求める”。
優秀なリーダーは“体験で育てる”。
まずは小さく、メンバーがハンドルを握る場面をつくってみてください。
チームの景色が、驚くほど変わり始めます。
(本稿は、『チームプレーの天才 誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること』の内容を引用したオリジナル記事です)







