1分スピーチ合戦
「お兄ちゃんが心配と思いました」と次男

 山田家での「1分スピーチ合戦」の2日目。実はいくつもの前哨戦がありました。次男は夜勤明けでイライラ気味のお父さんとぶつかってケンカ。長男は食事前に約束ゴトができていなかったので、お父さんにもお母さんにも叱られてご機嫌斜めです。

 でもそんなときこそ家族で1分スピーチ合戦だ!とお母さんは思いました。今日は夕食後にスタートです。ただ長男は「今日はやらない」と言いました。OKです。無理強いすることはありません。

 なので次男から始めました。そうしたら次男は、35秒(昨日より10秒長い!)も掛けて、お兄ちゃんが夕食前に叱られた話を語り続けました。「今日は、お兄ちゃんが父ちゃんと母ちゃんに叱られました。お兄ちゃんは……」

 終わった後、お母さんは次男に質問しました。「それで、どう思ったの?」
 すると次男は答えました。「お兄ちゃんが心配と思いました」

この答えで、スピーチ合戦の雰囲気が一気に変わりました。みな、次男はお兄ちゃんが叱られているのをきっと面白がっていただろう、と思っていたからです。「心配だった」と言われて、悪い気のしない長男、予想外に思いやりのある言葉に触れて、驚いた両親……。

父の反省、子どもたちの笑い
「家族の雰囲気を変える!」とお母さん

 次は誰が話す?と投げかけたら、意外なことにお父さんが手を挙げました。これまで結構消極的だったのに。

 スピーチの冒頭に、お父さんは言いました。「今日は眠くてイライラしてるところに、グチグチ次男が言ってきたから……怒っちゃってごめんなさい」

 すると息子たちが笑い、一気に家族の雰囲気が明るくなりました。いつもはなかなか言えないことが、「1分スピーチ合戦」では、言えたのです。

 結局、長男もスピーチし、またまたその日の出来事(校区探検)と、自分の楽しかった気持ちまでを、きっちり55秒でまとめきりました。みなに質問されるときも嬉しそうで、あのご機嫌斜めの少年はどこへ行ったことやら。

 お母さんは思いました。「みなの機嫌が悪いときこそ1分スピーチ、家族の雰囲気がどんよりしてるときこそ1分スピーチ!」

「1分スピーチ合戦」でヒトは変わる<br />~話す・聴く技術、感情知能(EQ)を鍛えよう

 これはもう、著者の意図を完全に超えた結論でした。もともと「1分スピーチ合戦」は、言語能力を鍛えるためのものでした。話すだけでなく、聴くという態度、そして質疑応答も含めてのものですが、基本的目的は「文章の構造化」にあります。1分話し続けるには、起承転結などの「構造」が必要だからです。

 でも山田家での真剣な実践は、「1分スピーチ合戦」が言語的知能だけでなく、EQ(感情知能)やマルティプル・インテリジェンス向上にも、大いに役立ちうることを示してくれました。