見た目は「チャラい」が
献身的で迅速な介抱ぶりに圧倒
「その瞬間『大丈夫ですか!?』と大きな声がしました。すぐに駆け寄った男性がいたのです。そのいでたちにびっくり。派手なブランドロゴの入ったTシャツに、いくつもピアスを開けて、髪は金髪。一見すると『チャラい男』です。揉めるとややこしそうな、少し近寄りがたい雰囲気の人でした」
「彼は真っ先に駆け寄ると、すぐに膝(ひざ)をついてお年寄りの顔を覗き込み、『大丈夫ですか?気分が悪いですか?』と落ち着いた声で声をかけました。そして素早く立ち上がり、片手を挙げて大声で駅員さんを呼びました。駅員さんはすぐに気がつき、走り寄ってきました」
「その間に、自販機で水を買って戻り、手渡していました。その献身的で迅速な介抱ぶりは、まるで救護訓練を受けているかのようで、周囲の乗客を圧倒しました。その行動力に、当事者ではない私も『ありがたいな』と思いました」
声をかける、駅員を呼ぶ、必要なものを手配するというのは、救護の手順としてお見事だったそう。この光景を目の当たりにしたAさんは、深く心を揺さぶられたといいます。
「もちろん、派手なロゴTと金髪、ピアスが、悪いということではありませんし、人の好みに口を出す気はありません。しかし『派手でチャラい人はやさしくない』という偏見を、それまで自分が持っていたことに気がつきました。誰よりも早く、困った人に手を差し伸べる彼を見て、『見た目だけで人を判断しちゃいけない』と心から思いました。人の優しさに触れて久々に心の底から感動しました」
緊急時に他者を思いやる行動力。人間の価値は内面的な資質によって決まることを教えてくれるエピソードでした。
車内のSOSボタンや
駅にあるAEDを活用して
私たちは駅や電車内でトラブルやアクシデントに遭遇した際、Aさんのように驚いて立ち尽くしてしまう人も多いでしょう。「自分以外に誰か他の人が動いてくれるだろう」「駅員に任せるべきだ」といった傍観者的な心理になりがちです。しかし緊急時においては、瞬時の判断が必要になります。
電車で急病人などが発生した際は、多くの車両に「SOSボタン」が設置されており、それを押せば乗務員と話ができます。緊急を要する場合は、ボタンを押して救護を求めましょう。また主要な駅や新幹線の車内にはAEDが設置されており、一般の人でも利用ができます。
何か起きた場合は他人事(ひとごと)とせず、積極的に助けにいきたいものです。それぞれ思いやりの心を持つことが、快適な車内環境をつくることに繋がっていきます。
※本記事のエピソードは、鉄道トレンド総研に寄せられた声を元に再構成しています。







