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東香名子氏が所長を務める「鉄道トレンド総研」のアンケート結果によると、通勤電車、新幹線、特急列車の中で「イラッとした経験」がある人は多い。だが、心温まるエピソードも鉄道トレンド総研に寄せられているという。(鉄道トレンド総研所長・鉄道コラムニスト 東 香名子)
電車の中で本当にあった
心が救われる出来事
私たちにとって、電車や駅は毎日の移動を支える必要不可欠な空間です。しかし、最近は忙しい現代人のストレスの元凶となっている残念な事実もあります。
鉄道トレンド総研が調査したことによると、通勤通学の電車で「イラッとしたことがある」と回答した人は91.8%。ほとんどの人がイラッとした経験があるという、見過ごせない結果となりました。また通勤通学の電車だけでなく、49.7%の人が「新幹線や特急列車でイラッとした」経験があると回答した調査も。もう電車や駅は、快適な場所ではなくなってしまったのでしょうか。
しかし、まだまだ電車は捨てたものではありません。嫌なことがあった日でも、予期せぬ温かい言葉や行動によって、心が救われる瞬間があります。それは駅や電車のなかで起きています。今回は、見知らぬ人同士が集まる公共の空間で交わされた、優しさあふれるエピソードをご紹介します。
疲れてゲッソリしていたときに
心に深く響いた「車掌さんの一言」
多忙な一日を終え、誰もが疲れを感じる仕事終わりの時間。そんな乗客たちにいたわりの言葉を贈った車掌さんのアナウンスが心に深く響いたというエピソードです。
埼玉県在住の女性Aさん(50代)はこう振り返ります。
「仕事が終わった日の夜に、いつものように西武線で自宅に帰っていました。帰宅のラッシュの時間、池袋から出る急行はいつも満員で、ホームに並ばないと座ることができません。私も仕方なく立っていました」
「疲れたなぁとゲッソリつり革につかまっていたのですが、車掌さんのアナウンスが私をほっこりさせました。次の停車駅や、乗り換え案内の後に『今日も一日、おつかれさまでした。気を付けてお帰りください』という言葉を加えていたのです」
「何気ない一言かもしれませんが、車内がふわっと暖かい空気に包まれた気がしました。アナウンスにはもちろんマニュアルがあると思いますが、そういうことを言う車掌さんは珍しいなと、感心してしまいました」
運行情報や安全確認といった定型的なアナウンスの中で、個人的な労いの言葉が加えられたエピソード。乗客が単なる生物ではなく「ひとりの人間」として扱われていると感じますね。この車掌さんの粋な心遣いは、多くの乗客の疲れを癒し、明日への活力を与える力を持っていたはずです。







