【5万円の支払い!?】身近な人が亡くなった直後の「NG行動」ワースト1とは?
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。

【5万円の支払い!?】身近な人が亡くなった直後の「NG行動」ワースト1とは?Photo: Adobe Stock

知らないと絶対損する「世帯主変更」の話

 本日は「身近な人が亡くなった後のルール」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。

 世帯主が亡くなった場合には、「世帯主の変更届」が必要です。期限は14日以内とタイトです。

 世帯主とは、1つの住民票の中に記載されている世帯の代表者として、行政的な手続を行う人のことをいいます。主に世帯の生計を担っている人で、社会通念上妥当と認められる人と定義されていますが、15歳以上の人であれば、年齢や所得に関係なく、世帯主として届け出ることが可能です。

 世帯主の役割として身近な事例では、新型コロナウイルス対策として国民1人につき一律10万円が支給された特別定額給付金について、世帯主の口座に家族全員分が振り込まれるしくみがとられました。

住民異動届とは?

 世帯主が死亡した場合に、亡くなった世帯主から新しい世帯主へと登録変更をするための届出です。様式は市区町村によって異なりますが、役所の窓口やホームページから入手可能です(届出の名称や様式は市区町村によって異なります)。

提出先は?

 現在住んでいる市区町村役場に提出します。支所や出張所、サービスコーナーでは受付をしていない場合もありますので、ご注意ください。事前に市区町村の案内で確認してください。また、郵送での手続は原則としてできません。

届出ができる人は?

・変更後の世帯主となる人、あるいは同一世帯の人
※上記の人から委任を受けた代理人が手続することも可能

届出に必要なものは?

・窓口に行く人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
・窓口に行く人の印鑑(認印でOKです)
・国民健康保険証(加入している場合のみ)
・代理人が届出をする場合には、委任状

 印鑑(押印)については、届出書を自署する場合に不要となる自治体もあります。故人の配偶者がお年を召していて、ご自身で住民異動届を記載することが難しく、付き添いの子どもが記載するような場合には、ご自身の印鑑が必要になりますので、ご持参ください。

 ちなみに、「印鑑をなくそう!」という世の中の流れはありますが、この届出については、現在も印鑑が必要とされる自治体が多いです(事前に市区町村の案内で確認してください)

届出しなくてもよい場合もある?

 変更する必要がない場合や変更にあたって選択の余地がない場合には、この手続は必要ありません。具体例を挙げます。

①1人暮らしだった方が亡くなった場合には、その後、その世帯で世帯主となる人が存在しないため、届出は不要です。
②世帯主が亡くなり、その世帯に残った人が1人だけの場合には、新たに世帯主になる人が確定している(選択の余地がない)ため、届出は不要です。
③もともと世帯主でなかった方が亡くなった場合には、変更する必要がないため、届出は不要です。
④世帯に残った人が、配偶者と15歳未満の子どもである場合、15歳未満の子どもは世帯主になることができないため、届出は不要です。

 つまり、世帯主が死亡し、その世帯に15歳以上の方が2人以上残っている場合には届出が必要ということになります。

14日以内に提出しよう! 期限を過ぎると罰則が!?

 身近な人が亡くなったとき、「悲しみの中でつい後回しにしがち」なのがこうした手続です。しかし、変更の事由が生じた日(世帯主の方が亡くなった日)から14日以内に提出をする必要があります。

 世帯主の変更を14日以内にできなかった場合、住民異動届とあわせて届出期間経過通知書を提出しなければなりません。これは、届出期限までに提出できなかった理由を記載するための書類です。この通知書は管轄の簡易裁判所に送付され、遅延期間や遅延理由によっては5万円以下の過料が科される可能性があります。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・編集を行ったものです)