「本当に解けちゃった!」「人生で大切なことまで教えてくれる!」
と話題沸騰中の本『たった1日で誰でも開成・灘中の算数入試問題が解けちゃう本』は、フルカラーで、マンガやイラスト満載の、算数エンタメ本だ。著者はDeNAでAIプロダクトマネージャー兼AIエンジニアとして活躍する菅藤佑太氏。本記事は、算数が苦手な小学生と先生の対話で構成される本書の中から「AIにはできないこと」の部分をお届けする。みなさんは、どれだけAIが進歩してもできないことって何だと思いますか?(構成/ダイヤモンド社・淡路勇介)

たった1日で誰でも開成・灘中の算数入試問題が解けちゃう本Photo: Adobe Stock

AIは「さみしい」の意味を知っている。でも……

先生:AIは「さみしい」という感情を知ってはいる。聞いたらそれがどんな感情か説明もできる。でも、AIにさみしさを感じることはできないんだ。

小学生:でも先生、「悲しそうな顔するロボット」とかいるよ!

先生それはあくまで悲しそうな顔をしているだけで、実際に悲しんでいるわけではないんだ。「こういうとき、悲しい顔をしてください」と人間が指示を与えているだけ。

小学生:なんか、さみしくなれないのも、それはそれでさみしいね。

先生:その、「さみしくなれないのもさみしい」という気持ちも人間特有で、AIには感じられない。ちなみに、カレーは好き?

小学生:え、急になに? 笑 もちろん好きだよ!

先生:AIにカレーの作り方を聞いたらくわしく教えてくれる。

小学生:カレー以外のレシピも何でも教えてくれるよ!

先生:そうなんだ。聞けば何でも教えてくれる。でも、AIにカレーの辛さとか、匂いとか、舌触りとかは感じれないんだ。レシピは知ってるのに。

小学生:カレーの美味しさを経験できないなんて……!

先生:そう、AIにカレーを食べて、「あぁ、思ったより辛い! 汗が止まらない! でも美味しい……」っていう経験はできないんだ。本の冒頭に「公式を知っているだけでは意味がない」って話したけど、まさしく「公式を知っているだけ」は「AIがカレーのレシピを知っているだけ」というのと同じだ。知識を知っているだけの頭の良さには意味がなくなったんだ。レシピを知ってるなら、実際に作ってみる。そして、「レシピ通り作ったのに、なんで上手くできないんだ!」を経験してほしい。

小学生:ほんとレシピ通りにやっても上手くできないの不思議よね~。でも隠し味を入れたりして上手くできたら、格別なんだよね~。

先生:そうなんだよ! それが人生の醍醐味だ! だから、いろんなことを経験して、いろんなことを感じてほしいんだ。経験した上で、実感のある知識は使える。意味がある。これからどんどんAIは進化して、頭が良くなる。でもおそらくお腹を空かせて、空腹感を感じ、カレーを自ら作って食べることはないだろう。みんなには、知識だけの頭の良さではなく、経験して実感をともなった知識を増やしてほしい。

小学生:カレーを食べない限り、カレーの美味しさがわからないもんね……。

先生:そうなんだ! そんなことが、世の中にはたくさんある! そう、この本のテーマは「AIにできないこと」なんだ! ちなみに、この本でやったどの入試問題もAIにはできなかった。

小学生:あ、だからこの本では図形問題だけ取りあつかったの?

先生:そういうことだ! AIは計算問題は得意なんだけどね。それこそ東大の問題だって解けちゃう。でも図形問題は苦手。この本に載せた問題も、小学校の知識ではなく、高校でやる関数などを使って解こうとしたり、ネット上から答えを拾ってこようとする。とにかく、AIは補助線が引けないんだ。こっちに補助線引いてダメだったからこっちに……ができない。ちなみにさっき「もっと問題が解きたくなってきた」って言ったね?

小学生:うん、なんか楽しくなってきた!

先生:その気持ちを大事にしてね!

(本記事は『たった1日で誰でも開成・灘中の算数入試問題が解けちゃう本』の一部を加筆・修正した記事です)