実際、コメダでは顧客が長時間滞在することを前提に、店作りを行っています。

 座席はゆったりとしたソファを利用していて木材を多く使った内装です。テーブルも広く、電源完備で仕事や勉強に使いやすく、隣の席との間仕切りなど、まるで自宅のリビングのような長い滞在前提の空間設計をしています。

コメダの正体は
「カフェの仮面を被ったファミレス」

 ここまで書くと、勘の良い方は、客単価を上げる戦略なんだろうと思われるかもしれません。

 確かに、次の図からわかるように、外食産業の業態別の客単価と座席回転率の関係を見ると、座席回転率を上げるか、客単価を上げるかの2パターンの戦略に分かれていて、その両立は難問です。

コメダ出典:外食産業経営動向調査報告書(平成23年度データ、平成25年3月)より筆者作成
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 居心地が良い空間で長居すれば、顧客はコーヒーだけでなく、名物シロノワールに代表されるデザートやサンドイッチ、あんかけスパといったフードを注文する可能性が高まります。客単価的にはカフェというよりは、むしろファミレスに近いかもしれません。

 一方、座席回転率を上げる工夫がされていないかというと、そんなことはありません。

 多くの店が早朝7時から深夜11時までの長時間営業しているほか、カフェがランチや通勤時間にピークを迎えるのに対し、コメダは本来閑散としがちな朝にはモーニング、昼のランチ、午後のティータイム(シロノワール)、そして夜の軽食と、全時間帯で万遍なく需要を取り込むメニュー構成があり、偏りなく座席が回転する工夫がされています。