第1位「安心できる居場所」
さわ:私が精神科医としても、親としても一番大事だと思うのは「安心できる居場所があるか」ですね。
――なぜこれが一番大事なのでしょうか。
さわ:どれだけ良い学歴を手に入れても、どれだけ夢中になれることや自信を持てる分野があっても、それだけでは人は折れない保証にはなりません。私が一番大事だと思っているのは、「安心できる居場所があるかどうか」です。
――家庭が、その居場所になるべきだと。
さわ:必ずしも家庭でなくてもいいと思います。でも家の中が、「いちばん自分をさらけ出せる場所」になるといいですよね。外では頑張って良い顔をしていても、家に帰ってきたときくらいは、弱音を吐いてもいい。格好悪い自分を見せてもいい。そういう家庭環境があるからこそ、人は外で頑張れるのではないでしょうか。
――「何かができなくたっていい」というメッセージが大切なんですね。
さわ:そうですね。「きちんとしている自分」だけが生きていていいわけではありません。「できる自分」だけが価値ある存在でもありません。
――最後に、あらためて大切なことをまとめていただけますか。
さわ:一番大事なのは、「生きていてもいい」という命の大切さや、「どんな自分でも存在価値がある」という感覚を、子どもが育つ過程で感じられること。その3つがあれば、子どもは勝手に育っていく気がします。
――“夢中になった経験”も、“自分への信頼”も、すべてはこの土台の上に乗っている。
さわ:家に帰れば、自分のままでいていい。失敗して帰ってきても、がっかりされるだけの場所ではない。そんな「安心できる居場所」があること。それこそが、学歴よりもずっと大事な、第1位の条件だと私は思っています。
――子どものことを想うがゆえについ「うまくいってほしい!」と願ってしまいますが、そういうときこそ「失敗してもいいんだよ」という意識を持って子どもと接したいと思います。
塩釜口こころクリニック(名古屋市)院長。児童精神科医。精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師
1984年三重県生まれ。開業医の父と薬剤師の母のもとに育ち、南山中学校・高等学校女子部、藤田医科大学医学部卒業。勤務医時代はアルコール依存症など多くの患者と向き合う。発達ユニークな娘2人をシングルで育てる母でもあり、長女の不登校と発達障害の診断をきっかけに、「同じような悩みをもつ親子の支えになりたい」と2021年に塩釜口こころクリニックを開業。開業直後から予約が殺到し、現在も月に約400人の親子を診察。これまで延べ5万人以上の診療に携わる。患者やその保護者からは「同じ母親としての言葉に救われた」「子育てに希望が持てた」「先生に会うと安心する」「生きる勇気をもらえた」と涙を流す患者さんも多い。
YouTube「精神科医さわの幸せの処方箋」(登録者10万人超)、Voicyでの毎朝の音声配信も好評で、「子育てや生きるのがラクになった」と幅広い層に支持されている。
著書にベストセラー『子どもが本当に思っていること』『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』(以上、日本実業出版社)、監修に『こどもアウトプット図鑑』(サンクチュアリ出版)がある。









