小学4年生に親が渡した「1枚の表」がすごすぎる!中学受験の“成否”を決定づける家族会議『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第111回は、「志望校は、誰がどう決めるのか」について考える。

小4で手にした「進路選びの表」

 東大合格請負人の桜木建二は、受験前期に不安になる生徒の心境を語る。「(模試などは)結果が出るまでに時間がかかる。それを待ち続けるのはとても辛く苦しい」。だからこそ、志望校を変更したり、あきらめたりする生徒が出てしまうのだという。

 このような悩みは、大学受験と中学受験では大きく異なる。大学受験では「どのレベルの学校を受けるか」という悩みだが、中学受験ではそれに加えて「そもそも受験をするべきか」ということも考えなくてはならない。さらに中学受験となれば、その決断は保護者が主導することも多いだろう。

 中学受験を決める・志望校を変える決断は、いつどのようにして行うのがいいのだろうか。もちろん理想論を言えば本人が責任を持って決めるべきだ。だが、小学生に求める決断としては酷だ。

 私個人の経験だが、中学受験が選択肢に入った小4の終わり頃に開かれた家族会議の様子を今でも覚えている。

 縦軸に時系列、横軸に学校名や進路が書かれた表(Excelというソフトで作られたことを知ったのは数年後だった)が親から配られた。最難関校から地元の私立校まで、あるいは地元の公立中学校に入って高校受験をするという選択肢、それぞれの校風はもちろんのこと、アクセスや費用まで書いてあった。

「この学校に行けば、こういう友達と一緒にこのくらいのレベルの勉強ができて、このくらいの大学に入れるかもしれない。だけどそのためには、小学校卒業までにこのくらいの時間を勉強に費やして、友達と遊ぶ時間がこのくらい制限される。それでも受験する?」という会話が交わされた記憶がある。

受験は成長の場だ

漫画ドラゴン桜2 14巻P157『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 小4の終わりというのは難関校の中学受験を始めるタイミングとしては遅い方だ。だが今思うと、受験を自分の話としてリアリティをもち、自分の希望をはっきりと表明するためには適齢だったのかもしれない。

 なぜ受験をするのか、ということを表面的にでも理解して自分の中に落とし込んでおくことは、後々の決断に大きく左右するだろう。

 大前提として、「中学受験は苦しくなったらやめる選択肢があるんだよ」ということを、受験勉強を始める最初に確認することが大事だ。

 受験校の変更はよくある話だ。私もそうだったが、最初は大風呂敷を広げるが、だんだんと現実的なラインに落ち着く。成績や性格が変わってから新たな志望校を検討するのは遅い。小学生はころっと意見が変わることもある。常に第2、第3の候補を用意しておくことが肝心だ。

 また、もし受験校が変わる可能性があるなら、早くから志望校別の問題演習に取り組むのはやめたほうがいい。どの学校にもある程度対応できる基礎学力をつけることは、学習効率を上げるだけでなく、「この学校の問題演習をしているから、もう後には引けない」というジレンマを回避する手段にもなる。

 いずれにしても、「正解」はない。個人的に重要だと思う点は、悪者を作らないということだ。たとえ受験に失敗したとしても、受験生本人が悪いわけではない。

 また、親が「自分が悪い」と言うのもあまりよくない。子どもからすれば、信頼している親の自虐は見たくないものだ。塾や学校のせいにすると、子どもに他責思考が芽生えてしまうかもしれない。受験という経験を通じて、どのように成長できるかが大切だ。

漫画ドラゴン桜2 14巻P158『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 14巻P159『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク