
三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第31回は「英語を話すマインド」について考える。
表現が分からない語彙に、どう向き合うか
東京大学現役合格を目指す天野晃一郎と早瀬菜緒に対し、英語の特別教師を務める鍋明美は「リスニングではメモを取らない」とアドバイスする。そして、「成功するには従わない勇気を持つことよ」と2人に語った。
日本人は英語が苦手だとよく言われる。そしてそれは「読む」よりも「話す」部分において特に言及される。実際、受験勉強の題材となる文章は、最新の論文や往年の名著など、語彙・表現ともにハイレベルなテキストからの引用が多く、日本人の英文読解力の高さを裏付ける。
かくいう私も英語を話すことは決して得意とはいえない。ここ1週間ほどインドネシアのジャカルタにおり、「日ASEANユースサミット」という、日本と東南アジアの高校生が、国境を超えた地域課題に対して政策提言を行うイベントを運営していた。
私はあるグループのファシリテーターを担当していたのだが、会話についていくことに精一杯で、ファシリテーターとしての役目を全うできたとは言い難い。とはいえ、東南アジアに住む同年代の学生たちが使う英語も完璧ではなく、高校レベルの語彙で理解できる会話がほとんどだ。
私が印象的だったのは、英語でどう表現するのかわからない語彙が出てきた時の対応である。彼ら彼女らは、詰まることなくすぐに調べ、あるいは母国語で友人に聞いて、会話を持続させていた。
思うに、私たちに足りないのは、そのようなマインドではないか。帰国子女でもない限り、英語が話せない・わからないのはあたりまえだ。大事なのは、わからないことを前提に会話を始めることである。
カジュアルな英語を学ぶコツは…

もう1つ大事なのは、学校で習う英語と日常英語には、かなりの差があることだ。基本的に学校で習う英語は「主語・動詞」がしっかりしており、内容も真面目なものばかりだ。しかし、日常の雑談では主語や動詞を抜くことなどザラにあるし、時にはかなり際どいスラングが飛び交うことだってある。スピーキングテストではそのようなスラングは出てこない。
多くの大学では、留学生と交流する機会が少なくない。もしそのようなチャンスがあれば、私はその人と連絡先を交換し、英語でチャットをするようにしている。使われている語彙のレベルや、どこまで構文を省略していいかなど、カジュアルな英語を学ぶことができるためだ。
学べるのは言語だけではない。フィリピンに行った際にインスタグラムを交換した学生と、日本の行事について話題になったことがある。クリスチャンである彼に、「クリスマスを祝った直後に初詣に行くのは、いずれの神をも冒涜する行為ではないか」と指摘され、日本人の宗教観の複雑性を身をもって実感した。
最近はSNSを中心に、オーバーツーリズムや移民問題などに刺激された極端な排外主義を唱える意見を多く見る。もちろんこれらの問題は、現実を注視し真剣に取り組むべきで、間違っても「対話が全てを解決する」という理想論だけでは解決につながらない。しかし、外国人と一度も直接のコミュニケーションを持たないままに、排外的な意見を声高に主張するのには違和感を覚える。
SNSでは国籍を超えた関係性を容易に構築できる。もちろんその容易さがもたらす危険性には重々気をつけるべきだが、このような新たな国際交流の主軸になりうるのは、デジタルネイティブと言われる我々若者だと思う。

