株式投資で資産を増やし続ける人たちは、「株の買い時と売り時」をどう見極めているのでしょうか?「株価チャートのクイズに答えるだけで株のセンスが身につく」―そんなユニークなスタイルで人気を集めているのが『株トレ──世界一楽しい「一問一答」株の教科書』です。著者は、2000億円超を運用した元ファンドマネジャー、楽天証券の窪田真之さん。この記事では、編集担当の視点から、本書のポイントを紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

株で儲けている投資家は見逃さない「売りの正しいタイミング」Photo: Adobe Stock

感情に流されない「売買判断」のものさし

「もう少し待てば、きっと戻るかもしれない」そう思って様子見を続けた結果、気づいたときには含み損が大きくなっていた。株式投資をしていれば、誰もが一度は経験する失敗ではないでしょうか。

 こうした場面で、願望や感情ではなく、客観的に判断する基準を持っているかどうか。それが、資産を増やせる個人投資家とそうでない人の分かれ道です。

『株トレ』では、その判断基準の一つとして、「ボリンジャーバンド」を活用したチャート分析の手法を紹介しています。

ボリンジャーバンドが示す「売り」のシグナル

 ボリンジャーバンドとは、株価の変動の大きさ(ボラティリティ)を可視化するツールです。

・ボリンジャーバンドの幅が狭い → ボラティリティが小さい。値動きが落ち着いている。

・ボリンジャーバンドの幅が広い → ボラティリティが大きい。値動きが激しい。

 では、このボリンジャーバンドが示す「売りシグナル」とは、どのような瞬間でしょうか。

 窪田さんが挙げるのは、「狭かったバンド幅が一気に拡大し、株価が下のバンドを突き抜けて急落した瞬間」です。

 これは、マーケットに新たな悪材料が出て、投資家が一斉に売り始めたことを示唆しています。下落トレンドへ切り替わった可能性があるのです。

あなたなら、どうする?

 ここで、『株トレ』に掲載されているチャートのクイズを見てみましょう。

 H社の週足チャートにボリンジャーバンドを書き込んだものです。3週間前、長い陽線をたてたところで買いましたが、その後、急落してしまいました。

 売りか、買いか、それとも様子見か。あなたなら、どんな判断をしますか?

株で儲けている投資家は見逃さない「売りの正しいタイミング」

正解の判断は…

 H社の株価は先週まで、13週移動平均線に沿った、きれいな上昇トレンドを描いていました。

 3週間前に大陽線が出て、株価がボリンジャーバンドの外へ抜けた場面で、「買い」を入れた判断は間違いではないと、窪田さんは言います。

 しかし、その後状況は一変します。株価は移動平均線を割り込み、さらに下のボリンジャーバンドを突き抜けて急落しました。

 それまで優勢だった買いが一気に崩れ、相場に悪材料が広がったことがチャートから読み取れます。

 この場面で窪田さんが勧めるのは、「傷が浅いうちの損切り」です。

 損切りは、誰にとってもつらい判断でしょう。しかし、迷って様子見をしたり、感情のまま買い増したりすれば、損失はさらに膨らみかねません。

 窪田さんは、買った直後に悪材料が出て下落するという「不運」も、相場では避けられないと言います。大切なのは、その不運にどう向き合うかです。

 チャートから「状況が変わった」ことを読み取り、「これは失敗だった」と素直に認めて、いったん退く。そうして資金を守れた人だけが、幸運な相場が訪れたとき、そのチャンスをつかめるのです。

 資産を増やし続けている投資家に共通しているのは、当て続けることではなく、外したときの判断が早いことなのです。