「仕事と介護の両立」を成功させている企業の共通点とは

家族の介護・看護をしながら働く人は約365万人となる一方、仕事との両立が困難となって離職する人は年間10万人を超える。こうした人々を支援するための育児・介護休業法は施行して30年以上経つが、介護では制度利用が低率。原因となる制度認知の低さ等を解消すべく、2025年4月に同法が改正され、企業に対して労働者への個別周知・意向確認等が義務付けられた。その特徴を厚生労働省の担当官に聞く連載3回の2回目は、「制度を生かして介護離職を防止する企業の共通点」を中心に送る。(聞き手/ダイヤモンド社 論説委員 大坪 亮、文/ライター 奥田由意)

育児・介護休業制度は
そもそもどういう制度か

――育児・介護休業制度は当事者以外にはなかなかなじみがありません。今回の法改正の背景にはその点があるかと思います。いわば“介護の初心者”向けに、あらためて既存の制度の概要を教えていただけますか。

 この育児・介護休業法というのは、「育児や介護に対応しながら、いかに働き続けるか」という点に主眼があります。そのためにさまざまな制度が定められていますが、一番大きなものは介護休業の制度です(図表1参照)。

 これは、要介護状態にある対象家族(配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫)一人につき通算93日まで、最大3回に分けて休業を取得できる制度です。この「最大3回に分けて取得できる」というのは、介護の段階に合わせて柔軟に使えるよう制度が進化した結果です。

 介護休業について重要な点は、自らが介護に専念するための期間ではなく、「介護の体制を構築するための期間」だということです。要介護認定の申請、ケアマネジャーとのケアプラン作成、施設の手配など、自分が直接手をかけなくても介護が回っていく体制を整えるための3カ月として使っていただくものです。