体制が整って、実際に仕事に復帰した後も、通院の付き添いなど突発的なニーズが発生してくると思います。そこで使っていただくのが、介護休暇です。
介護休暇は、要介護状態の家族1人につき年5日、2人以上なら年10日間取得できます。そして、大きな特徴は、時間単位で取得可能であるということです。一日単位ではなく時間単位で取得できるので、例えば、午前中だけ通院に付き添って、午後は仕事に戻るというような柔軟な使い方ができるため、仕事と介護の両立に大きく寄与します。
また、介護を日常としながら働き続けていく上で、残業があると業務負担が重いという方や、介護サービスを利用しながら時間を調整したいという方のために、以下のような幾つかの両立支援制度が整えられています。
短時間勤務制度は、労働者が利用を希望した場合に、例えば1日8時間のところを6時間にするなど、所定労働時間を短縮する措置です。フレックスタイム制や時差出勤制度は、労働者が働く時間帯を柔軟に調整できるようにするための仕組みです。事業主は、短時間勤務制度や時差出勤制度等の中から、1つを選択して措置する義務があります。
時間外労働の制限や所定外労働の制限(残業免除)は、フルタイムで働きながら、法定時間外労働を月24時間、年150時間以内などに制限したり、所定外労働を免除したりする措置です。
深夜業の制限は、午後10時から午前5時までの就業を制限するものです。
これらの制度を労働者個々のニーズに応じて、在宅介護サービスや施設介護サービスと組み合わせながら、自分なりの介護と仕事の両立の仕方を考えていただくことが大切です。法改正により、こうした制度がより使いやすくなることを目指しています。
今回の改正や、既存の法は、あくまで最低ラインの基準なので、そこからさらにどれぐらい上積みをしていくかは企業の自由です。介護休暇を年10日にすることや、フレックスタイム制のコアタイムをなくしてより柔軟なやり方にすることなど、いろいろなやり方があると思います。
企業に違反があった場合は
段階的に助言・指導・是正勧告
――企業が違反した場合、罰則はあるのでしょうか。
育児・介護休業法には、罰金刑や禁錮刑といった直接的な罰則は設けられていません。これは、本法が働きやすい職場環境を作り、育児・介護に直面しても働き続けられる環境整備を図ることを目的としているためです。大事なのは権利が適切に行使され、職場環境が整備されることであることを踏まえ、都道府県労働局が粘り強く助言・指導などを行うことで、企業の取り組みを促すアプローチを採用しています。
法律違反があった場合の対応は、段階的に行われます。まず、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が、日頃から報告徴収や助言・指導を通じて企業の適正な制度実施を促します。制度が法に沿った形になっていない場合は、行政指導の一環として是正勧告を行います。それでも改善されない場合の最終手段として、企業名公表という仕組みが設けられています。
ただし、これまで企業名公表に至った事例は一件もありません。多くの企業は、助言・指導の段階で適切に軌道修正を図り、制度を整備していただいています。これは、企業側も介護離職防止の重要性を理解し、制度の適正な実施にご協力いただいている証左といえるでしょう。







