新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、成績が伸びる子どものたった一つの特徴について解説します。
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テストの点数が上がらない…
「半年も通っているのに、テストの点数が変わらない」
「このまま続けて意味があるのだろうか」
「別の塾に変えた方がいいのではないか」
親御さんとお話ししていると、こうした迷いを持っている場合が多いです。これらの悩みはごく自然なものだと思いますし、どう声をかけていいのかわからないという親御さんも多いのだと思います。
ですが、成績が伸び悩んでいる時期に、親がまず確認すべきことは、点数そのものではありません。実は、全然違う指標を見る必要があります。
それは、子どもの中で“考えが動いているかどうか”です。
たとえば、家での会話を思い出してみてください。以前より、学校や塾の話をするようになっていないでしょうか?勉強の内容について、自分なりに説明しようとしたり、「今日はここが難しかった」「前よりは分かるようになった気がする」といった言葉が出てきていないでしょうか?あるいは、「なんでこうなるの?」「このやり方じゃダメなのかな?」といった問いを、子ども自身が口にするようになっていないでしょうか?
もし、こうした変化が起きているなら、それはとても重要なサインです。点数にはまだ表れていなくても、頭の中では確実に変化が起きています。
成績には「タイムラグ」がある
最近のテストは、昔と比べて明らかに性質が変わってきています。選択肢を選ぶだけの問題よりも、理由を説明させたり、考え方を文章で書かせたりする記述問題が増えています。英語でも数学でも国語でも、「考えたプロセス」を問われる場面が増えているのです。
こうした問題の特徴は、成果がすぐに点数として返ってこないことです。暗記中心の科目であれば、覚えた分だけ点が上がることもありますが、思考力や表現力が問われる問題は違います。考え方が変わり、言葉が増え、問いを立てられるようになってから、実際の得点に反映されるまでには、どうしても時間がかかります。
つまり、成績には「タイムラグ」があるのです。
このタイムラグの期間に、親が焦ってしまうと、せっかく育ち始めているものを壊してしまうことがあります。点数だけを見て「成果が出ていない」と判断し、環境を変えたり、やり方を次々に変えたりすると、子どもは「考える前に、結果を求められる」状態に置かれてしまいます。
成績が伸びる子の共通点
一方で、成績が伸びる子の多くは、点数が上がる前に、必ず“言葉の変化”が起きています。自分の考えを説明しようとする。分からないことをそのままにせず、問いとして口に出す。失敗した理由を振り返ろうとする。こうした変化は、テストの点数よりも先に現れます。
だからこそ、成績が伸びない時期に、親が見るべきなのは、「今、何点取っているか」ではありません。「この子は、自分の言葉で考え始めているか」。これが、唯一と言っていい判断基準です。
もし、会話が増え、言葉が増え、「なんで?」が出てきているなら、その子は前に進んでいます。目に見える点数が動いていなくても、地面の下では、確実に根が伸びている状態です。
勉強は、すぐに結果が出るものばかりではありません。特に今の時代のテストでは、「考える力」が育つまで待つ時間が、以前よりも必要になっています。だからこそ、親には「待つ」という判断が求められます。
成績が伸びない時期は、何も起きていない時間ではありません。むしろ、一番大事な変化が起きている時期です。その変化を、点数以外のところで見取れるかどうか。それが、親としてできる、最も重要な役割なのだと思います。
(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)




