新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、親の願いと興味のない子どもの行く末について解説します。

医者 子どもPhoto: Adobe Stock

子どもをマルチリンガルにしたいAさんの家庭

「子どもをマルチリンガルにしたい!」と意気込むAさんの親御さん。小さいときから英語塾だけでなく中国語やフランス語の塾にも通わせ、その金額は年間300万円以上にも上ったとのこと。しかし、なかなかAさんは他言語の習得ができない。それもそのはずで、Aさんはその言語に対する愛着が全くなかった。中国語を勉強しようにも、中国人と話したこともほとんどないし、中国語で観てみたい好きなエンタメも一切存在しない。結局お金だけかかって、なんの意味もない習い事になってしまった。

このようなケースは、最近本当に多いです。親御さんがスキルを身につけさせたいと思って教育投資を行うけれど、非認知能力のBelief(信念)やMind(意識・姿勢)が揃っていないために全く意味のない投資になってしまう、というものです。こういう場合、親御さんが「お金をたくさん払っている」という感覚があるために、子どもに対する期待値が大きくなってしまう場合があります。「こんなにお金をかけたのに」と考えてしまうことで、結果的に「なんでこんなにお金をかけているのに、あなたはできるようにならないの!」と子どもに対して怒ってしまい、それが子どもの自己肯定感を大きく下げてしまうパターンもあります。

医者になってほしい親と興味のない子ども

これは、外国語学習に限った話ではありません。たとえば「医学部に合格させたい!」と親御さんが意気込んでいて、どの科目も塾に通わせ、すべての教科に家庭教師をつけているご家庭。お子さんの成績が上がらないとき、親御さんは「塾が悪いのではないか」「家庭教師の先生の教えかたが悪いのではないか」と考えると思いますが、実はそれ以前の問題として、お子さんが医者になりたいとあまり考えていない、なんていうケースがあります。医学部に行きたいと考えていない子を、いくら塾に通わせても家庭教師をつけてもなんの意味もないのです。

逆に言えば、「医学部行って、お医者さんになって、誰かの人生の寿命を延ばす仕事がしたい」と考えている人であれば、「いつか英語で論文を読まなければならないんだから、英語の勉強をしなきゃ」と考えて、スキルを伸ばすための勉強を勝手にやり始めます。「家庭教師の先生の教えかたが悪いから成績が上がらない」のではなく、そもそもスキルを伸ばすための土台ができていないから成績が上がらないのかもしれないのです。

スキルの前に、信念やマインドを育てる。これは子育てにおいて、とても重要なファクターだと言えます。

(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』の抜粋記事です)