運営元を明記せず
匿名で利用できるサーバーを複数使用

 まず一つ目は、巧妙な匿名化を施している点だ。Golden GatewayやアダルトコンテンツマーケットXXXは運営元を明記しておらず、世界各国にある匿名で利用できるサーバーを複数使用している。

 アダルトコンテンツマーケットXXXのサーバーは、「3NT Solutions LLP」というホスティングサービスのサーバーを利用しており、「3NT Solutions LLP」のようなホスティングサービスは、一般的に「防弾ホスティング」と呼ばれる。防弾ホスティングは不正な活動やコンテンツを警察や執行機関から守るため、不正使用に対する情報開示の要求通知を共有しない、サーバーを別のIPアドレスに自動的に移動させる、地理的に規制の緩い国に拠点を置くなどの特徴がある。

 セキュリティ研究機関Insikt Groupからも、このホスティングサービスはコンピューターウイルスの配信や不正アクセスに使われるインフラの一部を管理していたと指摘されている。

サービスを提供するプロバイダの
責任は制限されている

 二つ目の理由には、プロバイダ責任制限法という法律が関係してくる。プロバイダ責任制限法とは、その名の通り「各種サービスを提供するプロバイダの責任を制限する」というものである。

 たとえば、SNSのXでは殺害予告や麻薬の売買といった非合法な書き込みが行われることもあるが、だからといって運営者のイーロン・マスク氏が殺害予告や麻薬売買で逮捕されることはない。乱暴に言ってしまえば「利用者がしたことであれば、運営者は責任を問われない」ということだ。

 アダルトコンテンツマーケットXXXはユーザーが自由に写真や動画を販売するという建前で運営を行っているため、児童ポルノが販売されていてもそれは販売者の責任であると捉えられて、運営会社に捜査が及びづらいと考えられる。

 過去には動画投稿サイトの「FC2」において、わいせつ動画(いわゆる無修正動画)を閲覧可能にした疑いで元運営者が国際指名手配で逮捕・起訴され、懲役3年、罰金250万円、執行猶予5年の有罪判決が言い渡されたことがあったが、児童ポルノに対してこのように厳しい捜査が行われる例を私は知らない。