とある1日のスケジュール

井上:プレイデートの日は、息子と同じプレイグループのクラスメートを学校まで迎えに行き、一緒に遊ばせなくてはいけないので、午後3時頃には仕事を切り上げて、子どもたちを家に連れて帰ったりします。また、各自の誕生日会は、クラスの数人だけを呼ぶといじめの温床になるということで、クラス全体で季節ごとに祝うのですが、自分の子どものグループの誕生会の日には、午後4時どころか、午後2時半ごろに仕事を切り上げます。

―― 午後2時半ですか。誕生日会がある日は、どのような1日になるのでしょう。

井上:朝8時までに子どもを学校に送り、8時半頃から仕事を始めます。そして2時半には仕事を切り上げ、3時に学校へ。同じ誕生日会グループの親たちと協力しながら、クラス全員の子どもを集めて、トランポリンで遊ぶ屋内施設など、誕生日会の会場に地下鉄などで連れて行きます。

 そこで、午後6時すぎまで遊ばせながらお祝いして、解散。自宅に戻り、夕食を食べて8時に子どもを寝かしつけます。仕事は2時半までしかできていないので、子どもが寝た後の1~2時間で残りの仕事を片付けて就寝、という1日ですね。

 プレイデートや誕生日会だけでなく、保護者たちが自主的に集まってクラスの問題を話し合う場など、夕方の時間帯には学校関連の予定が次々に入ります。その都合で早く退勤することも珍しくありません。デンマークの子どもがいる家庭は、だいたいどこも、こんな働き方をしています。デンマークの働き方は、「午後4時台に帰る短時間労働」というよりも、仕事で結果を出している限りは、働く時間帯や場所を選ぶ裁量が個人に委ねられているという、「柔軟な働き方」に大きな特徴があります。

午後4時台に退勤する国デンマーク、現地で働く日本人の「ある1日の時間割」井上陽子(いのうえ・ようこ)
ジャーナリスト、コミュニケーション・アドバイザー
筑波大学国際関係学類卒業後、読売新聞社に記者として入社。社会部で国土交通省、環境省などを担当したのち、ワシントン支局で特派員を務める。読売新聞在職中に、ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。2015年、妊娠を機に夫の母国であるデンマークに移住。ビジネス・インサイダーなどメディアへの執筆のほか、デンマークの経済社会や働き方に関する講演、日本とのビジネスに取り組むデンマーク企業などのサポートも行っている。共著に「『稼ぐ小国』の戦略 世界で沈む日本が成功した6つの国に学べること」(光文社新書)。

「夕方は仕事以外の時間」という社会の合意

―― そうした育児の役割は、両親でどのように分担しているのですか。

井上:子どもが2人いるので、私が学校関係の打ち合わせに出る場合には、夫は自宅で子どもたちの面倒を見ますし、夫が出る場合にはその逆、となります。

 デンマークは男女ともにフルタイムで働く共働き家庭がほとんどで、家事育児はほぼ同じように両親の間で分担しています。「どちらかが長時間働き、どちらかが家事育児の大半を引き受ける」という家庭は、母親が専業主婦である海外駐在員の家庭といったケースを除いて、ほぼ見かけません。送り迎えに来るのも、父親と母親の半々くらいです。

 そこに男女の区別はありませんし、仕事上の役職も関係ありません。夕方以降の時間に起きるさまざまなイベントのために職場を早く出るのは、誰もが当たり前にやっていることですし、健全な家庭生活を送るためには必要という理解もあるので、職場で罪悪感が生じることはありません。こういった働き方が可能なのは、デンマーク全体で「誰にとっても、仕事以外の時間は大切にされるべき」という認識が共有されているから。この共通認識があるからこそ、短時間労働で回る社会が成立しているのです。