「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。企業とユーザーが共同で価値を生み出していく「場づくり」が重視される現在、どうすれば価値ある戦略をつくることができるのか? 本連載では、同書の内容をベースに坂田氏の書き下ろしの記事をお届けする。

【新年に考える】中期計画が機能しないAI時代の「戦略のデザイン」入門Photo: Adobe Stock

中期計画が機能しなくなった
場づくりの時代

 新年あけましておめでとうございます。

 昨年は本連載をお読みいただき、誠にありがとうございます。今年も、皆さまにとって有意義な内容をお届けできるよう努めてまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 さて、2022年末のChatGPT公開以降、社会は大きく変化しました。

 これまでにも産業革命やスマートフォン革命など、さまざまな変革がありましたが、AI革命はそれらとは根本的に異なります。なぜなら、AI革命は「世界中で同時に進行」しており、特定の地域や業界だけが先行するという構図ではないからです。

 たとえば、私が先日訪れた欧州のテックイベントでは、スタートアップの約7割が、東南アジアで見た内容とほぼ同じものをテーマとして掲げていました。AIを活用した採用、教育、エネルギーマネジメントなど、地域を問わず同様の課題に取り組む企業が現れています。

 そして皆さんもご存じの通り、AIモデルは今この瞬間も進化を続けています。こうした環境では、従来の「3年スパンの中期計画」が現実に追いつかないのは明らかです。

「場づくり」の時代に求められるのは、
最善手の反復

 20世紀型の戦略は、「ゴール」と「現状」のギャップを埋めるための道筋を描くものでした。中期経営計画もその延長にあります。

 しかし、現在のようにゴールの設定自体が困難で、現状も刻々と変化していく時代においては、こうした静的な計画はかえって意思決定の柔軟性を損ないかねません。

 では、そんな不確実性の時代に、私たちは何を拠り所にすればよいのでしょうか?

 それは、「最善手を繰り返す」というアプローチです。

戦略を「デザイン」するという考え方

 とはいえ、「最善手を繰り返す」といっても、目の前の出来事に反射的に対応するだけでは、日本人が得意とする改善活動の繰り返しにとどまってしまいます。

 そこで重要になるのが、「戦略のデザイン」という考え方です。

 私は戦略を、以下の3つの切り口から「デザイン」するべきだと考えています。

 ・視点のデザイン:ユーザーの本質的なニーズを深く理解し、10年後の未来から現在を逆算して考える視点を持つ
 ・価値のデザイン:社会や組織にとって本当に意味のある価値を再定義する
 ・仕組みのデザイン:その価値を持続的に生み出す構造を構築する

 なかでも、特に重要なのは「視点のデザイン」です。未来からのバックキャスティングによって、従来の延長線にはない、新たな切り口から世界を見直すことができます。

 戦略はもはや、経営陣や経営企画部だけが考え、つくるものではありません。

 一人ひとりが問題意識を持ち、仲間を巻き込みながら、自ら戦略を「つくり、動かす」時代が始まっています。

 あなた自身の視点と行動が、2026年を飛躍の年に変える第一歩になるはずです。

坂田幸樹(さかた・こうき)
IGPIグループ共同経営者、IGPIシンガポール取締役CEO、JBIC IG Partners取締役。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)。ITストラテジスト。
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト・アンド・ヤング(現フォーティエンスコンサルティング)に入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。
その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。
退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
単著に『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』『超速で成果を出す アジャイル仕事術』、共著に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(共にダイヤモンド社)がある。