【一発アウト】「故人のスマホ解約」が招く最悪の結末…知らないと後悔するお金の話
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。
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知らないと大損!「仮想通貨の罠」に注意!
本日は「仮想通貨と相続」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)を持つ人は、ここ数年で大きく増えました。投資目的で少額を保有している人もいれば、数百万円単位の資産を築いている人もいます。これらは預金や株式と同様に「財産」であり、相続の対象です。
ただし暗号資産には特徴があります。それは、形がなく、パスワードがわからなければ相続人は事実上アクセスできないという点です。
銀行口座のように通帳やカードといった証拠が残らない場合も多く、相続の場面では「そもそも存在に気づけない」「存在はわかっても引き出せない」という事態が起こりやすいのです。
日本人の多くは取引所に預けっぱなし
暗号資産の管理方法にはいくつか種類がありますが、日本では大多数の人が取引所のアカウントにそのまま預けているのが現実です。取引所は金融庁の登録を受けており、セキュリティも整っているため、利用者にとっては「置いておくだけで安心」と思いやすいのです。
ただし相続の観点から見ると、取引所にある暗号資産はアカウントにログインできるかどうかがすべてを左右します。では、家族はどうやって暗号資産の存在を確認すればいいのでしょうか?
家族が暗号資産を見つけるには?
最初の手がかりは、故人が使っていたパソコンやスマホです。アプリ一覧やブラウザのブックマーク、メールに届く取引所からのお知らせなどがヒントになります。また、銀行口座の入出金履歴をたどることで、暗号資産取引所への入金が見つかることもあります。つまり、紙の通帳が残らないからこそ、デジタルの痕跡を丁寧に探すことが重要なのです。
「パスワードがわからない!」という大きな壁
暗号資産の相続で一番多い問題は「パスワードがわからない」というものです。この問題への対策は、取引所名やログインIDをエンディングノートなどに書き、パスワードそのものは金庫や貸金庫にメモを保管するなど、安全性と確実性を両立させる方法です。パスワードを直接書き残すことに抵抗がある場合は「ヒント」を残すだけでも、遺族にとっては大きな助けになります。
暗号資産の罠! 手続が終わるまで、スマホは解約しない!
そして忘れてはいけないのが二段階認証です。最近の取引所ではパスワードだけでなく、スマホのアプリやSMSによる認証が必須です。
したがって、相続手続が終わるまでは、スマホの解約は控えておきましょう。また、二段階認証用の復元コードを控えておくと、相続時の混乱を避けられます。
ただ、日本国内の取引所を利用している場合には、もしもパスワードがわからなくても、相続人が所定の手続をすれば、暗号資産を相続することは可能ですのでご安心ください。
一方、外国の取引所を利用している場合や、ネット上の取引所ではない特殊な方法で管理をしていた場合などには、パスワードがわからないと永久に引き出せなくなる恐れがあるので注意が必要です。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)








