AIが人間の知能を増幅させる2026年、コンサルティングや経営企画といった「頭脳労働」の現場では、何が起きているのか。情報や答えの価値が低減する中で、ビジネスパーソンが磨くべき「問題発見力」の正体とは。AI・ロボットがもたらす労働の消失は、人類の幸福の形をどう変えていくのか。特集『高岡浩三の「企業の通信簿」』の本動画では、元ネスレ日本CEOの高岡浩三氏、元ボストン コンサルティング グループ日本代表の内田和成氏、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏によるスペシャル鼎談で、歴史の転換点に立つビジネスパーソンが直視すべき、26年の未来図を提示する。

「答え」を売るコンサルは消える
人間は「考える」か「快楽」に溺れるか。ロボットがもたらす究極の役割分担

 AIの進化と普及は、コンサルティング業界の崩壊を招くのか。

 米マッキンゼーの大規模リストラ報道に対し、元ボストン コンサルティング グループ日本代表の内田和成氏は、「リサーチ業務は消えるが、コンサルは消えない」と断じる。2026年以降に起きる変化の本質は、日本企業に根強い「パッケージとしての解決策」を丸投げする依存関係の解消だ。

 経営者とコンサルがお互いの知見をぶつけ合い、共に成長する「真剣勝負」の場にこそ価値が残る。クライアント側には、コンサルの提案をうのみにせず、自ら「修正・仕分け」ができる高いリテラシーが求められる時代が訪れる。

 頭脳労働の現場が変わる一方で、人間が担ってきた物理的な「作業」も劇的な変化を迎えようとしている。元ネスレ日本CEOの高岡浩三氏は、少子高齢化で人手不足が極まる日本こそ、米テスラなどが開発する「人型ロボット」を真っ先に導入すべきだと提言する。介護や家事、工場のラインといった「慣れたら誰でもできる作業」をロボットが肩代わりすることで、人間は「答えのない問い」を考える高次元の仕事に専念できるようになるからだ。

 この役割分担が進んだ先にあるのは、かつて奴隷が労働を担い、市民が思索や娯楽にふけった古代ギリシャのような社会への回帰か。かつてのローマ市民がコロシアムや浴場に充足を見いだしたように、AIロボットが経済を支える26年以降、私たちは労働の呪縛から解放され、それぞれの「快楽」を享受する生き方を選択できるようになるのかもしれない。

 しかし、こうした社会を実現するには「富の再分配」と「個人の自立」が不可欠だ。

 30年ぶりに金利が動きだし、日本経済が「ノーマル」な世界へと戻る26年。これまでのような「低空飛行の居心地の良さ」に甘んじるのではなく、北欧諸国のように企業の強制淘汰を容認しつつ、あぶれた人材をリスキリングで救い上げる国家モデルへの転換が急務となる。歴史の転換点となる26年、私たちは自立した個人として、どのような未来を選ぶべきか。

高岡浩三(たかおか・こうぞう)
1960年生まれ。83年神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本入社。30歳で同社史上最年少部長に昇格。「キットカット」受験キャンペーンを成功させ、受験生の定番のお守りになるよう普及させた。2010年よりネスレ日本代表取締役社長兼CEO。オフィス向けの「ネスカフェ アンバサダー」を立ち上げ、新たな市場を開拓。20年3月、同社を退社。サイバーエージェント社外取締役。主な著書に『企業の通信簿』『ゲームのルールを変えろ』(ダイヤモンド社)、『ネスレの稼ぐ仕組み』(KADOKAWA/中経出版)、『世界基準の働き方』(PHP研究所)など。
内田和成(うちだ・かずなり)
東京大学工学部卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。日本航空を経て、ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年から04年までBCG日本代表を務める。06年度には「世界の有力コンサルタント25人」に選出。06年から22年3月まで早稲田大学教授。早稲田大学ビジネススクールでは意思決定論、競争戦略論、リーダーシップ論を教える傍ら、エグゼクティブプログラムにも力を入れる。主な著書に『客観より主観 “仕事に差がつく”シンプルな思考法』(三笠書房)、『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』『イノベーションの競争戦略』(東洋経済新報社)、『リーダーの戦い方』(日本経済新聞出版)、『アウトプット思考』(PHP研究所)、『できるリーダーが意思決定の前に考えること』(日経ビジネス人文庫)など、ベストセラー・ロングセラーが多数ある。
入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサー。13年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。19年から教授。「Strategic Management Journal」「Journal of International Business Studies」など国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP)がある。