「お前は、どうしたいの?」
リクルートの文化を象徴する質問は、果たして本当にいい質問なのか?。問いのプロフェッショナル」の2人が令和の今に合わせた「問いかけ」について語る。ベストセラー『「なぜ」と聞かない質問術』の著者・中田豊一さんと『冒険する組織のつくりかた』著者である安斎勇樹さんが、それぞれの知見から「職場のコミュニケーションの悩み」を解決へ導く。(構成協力/高関進・構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

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「おまえはどうしたいの?」は、本当に“いい質問”なのか?

「元リクルートの上司からよく、『おまえはどうしたいの?』と聞かれます。この問い、ぶっちゃけシンドいだけだと思うんですが……そんなにいいですか?」(20代男性・営業職)

安斎勇樹(以下、安斎) ぼくはリクルートのマネジャーに『新 問いかけの作法』の研修を定期的にやらせていただいていて、アイスブレークとして「『おまえはどうしたいの?』という質問に点数をつけるなら何点?」と参加者に聞いたりしているんです。

平均点は「100点満点中50点」くらいで、高めにつける人と低めにつける人の差が激しいですね。低い点数をつけた人は、この質問をされたとき「上司が責任を放棄している」と感じてモヤモヤした体験があったりする。人によって評価がばらけます。

中田豊一(以下、中田) こう聞きたくなる気持ちはわかりますが、私はこういう質問の仕方はしないですね。この場合、直接「どうしたい?」と聞かずに、相手が心からやりたがっていることを引き出せるかどうかが対話術の神髄でしょうね。

安斎 中田さんから見て、この質問はどんなところが気になりますか?

中田 上から目線で、回答を相手に丸投げしているところですね。もちろん、相手と細かい前提条件などが共有されていて、相手がすんなりこれに答えられるなら問題ないですが、もしそうでないとすれば、相手にはかなりストレスを与える聞き方だと思います。たいていの人が答えに窮するのではないでしょうか。

「お前はどうしたいの?」と聞く人は嫌われる。では、頭のいい人は何と聞く?『冒険する組織のつくりかた』(安斎勇樹 著)

「リクルートという文脈」において初めて効果を発揮する

中田 これは、会社が儲かろうか儲かるまいが、とにかく「相手が最終的にどうしたいのか?」を聞いています。本質的な問いだけに、「本当にいまこの場面でこれを聞くのが適切なのか?」を検討しながら使うべきでしょうね。

安斎 やはりこの質問文だけだとやっぱり挑発的だし、「おまえ」呼ばわりだし、上司から質問するという権力性も働くので、かなり「シンドい問いかけ」なんだろうなと思います。一般的な感覚からすれば、「そんなこと聞かれたくない」という人が大多数ではないでしょうか。

逆に、リクルートの人たちに聞くと、「キャリアの軸を見失いかけていたときに、この質問をされたおかげで自分の進むべき方向を取り戻せた」という人もいます。

個人の主体性や個の尊重など、リクルートがずっと大切にしてきた理念やカルチャーと合致する文脈で使われたときには、おそらく大きな効果を生み出して輝く――そういう問いかけなんでしょうね。

聞きたいことを絞って具体的に質問する

中田 私たちが提唱している「メタファシリテーション」の手法からすると、「おまえはどうしたいの?」というのは、あまりいい質問ではありません。「どう質問」に分類されますので、原則として使用しませんね。

安斎 「どう質問」のように「how」を聞くのは、なぜよくないんでしょう?

「お前はどうしたいの?」と聞く人は嫌われる。では、頭のいい人は何と聞く?『「なぜ」と聞かない質問術』(中田豊一 著)

中田 こちらが質問をつくる努力をしないで、相手に回答を考えることを丸投げしてしまっているからです。学校から帰ってきた子どもに「どうだった?」と聞いてみても、子どもからは「別に…」しか返ってきませんよね。

この場合、たとえば「◯◯はどうだった?」など、こちらが何を聞きたいのかをもっと絞り込むようにすると、相手は答えやすくなります。「おまえはどうしたい?」も、まだまだ工夫の余地が大いにある質問だと思います。

安斎 なるほど。リクルートでもこの問いは「本当に自分に素直に、自分でやりたいことを決めてますか?」「ちゃんと『自分』を主語にして働こうぜ」という確認の意味で発せられていたはずなんです。

でもリクルート内ですら、相手としっかり文脈が共有されていないなかだと、こう聞かれたときにウンザリされてしまうこともある。それこそ、悪い意味での「どう質問」になってしまうんですね。

そこに対して「別に…」なんて回答しようものなら、主体性がない人材として扱われてしまう――。そういう意味では、やはりちょっと取り扱いが難しい質問であるのは間違いなさそうですね。

(本記事は本稿は、『「なぜ」と聞かない質問術』の著者・中田豊一さんと、『冒険する組織のつくりかた』の著者・安斎勇樹さんによる特別な対談記事です)