「学校は建前で、本当は山橋薬舗にいらっしゃる」
ヘブンをしおらしく見守るトキに「口づけはせんのか」とからかうことも忘れない司之介。
彼はほんとうにいいキャラであるが、今度は無口なキャラが現れた。
車夫の永見(大西信満)だ。
「不器用ですが、走らしぇしぇ、走らさせていただきます」と話すのも不器用そうだ。
行きの人力車で、錦織はヘブンに嘘(うそ)は嫌いと言っていたのにとツッコむ。「松江のこれからのことや、これからの松江のことや」と司之介に言ったのは、ヘブンと熱い話を交わした記憶がなかったから、咄嗟(とっさ)に誤魔化していたのだ。何か言っているようで何も言ってない構文は、何かを誤魔化すときのものなのだろう。「嘘でなく建前ですかね」と錦織は理解を示す。
建前と言う言葉が『ばけばけ』では拡大解釈されているような気もしないではないが、ここでは嘘は悪意のあるもの、建前はやさしさからくるものと考えればわかりやすい気がする。
フミの提案で、お世話になるヘブンに何かお祝いを贈ろうと考えたトキ。日本における結納返し的なものであろうか。何がいいか考えながら買い物をしていると、永見だけひとり帰ってくる。
ヘブンはどうした? と聞くと、「わしゃあ、不器用ですけん黙ることしかできません」「学校は建前で、本当は山橋薬舗にいらっしゃるなどとは」「不器用ですけん」。
彼の場合は何も言ってないようで全部話してしまっていた。
「ありがとうございます」と言うトキの声も顔も明らかに機嫌が悪くなっている。一応「ありがとうございます」と礼を言ったものの、本心はいら立っている。この礼こそ「建前」であろう。
建前と嘘の相違について考えるよりも、新婚早々、夕飯を共にしないで、夕方寄り道している新郎には心配しかない。









