安全対策として導入した
ドップラーレーダーの効果
たとえ強大な自然を前にした「想定外」の「不可抗力」だったとしても、鉄道事業者として事故は決して繰り返してはならない。JR東日本は本事故を契機に、風速計の増設、防風柵の設置、運転規制値の見直し、さらに防災研究所の設立など、さまざまな強風対策に乗り出したが、事故現場周辺の恒久的な安全対策として導入したのがドップラーレーダーだった。
ドップラーレーダーとは、従来の気象レーダーが観測できる雨や雪の分布や強さに加え、ドップラー効果を利用することで風の速度や方向を観測できる装置だ。航空業界では、ダウンバーストなど風向きの急変は重大事故につながることから1995年以降、国内主要空港で空港気象ドップラーレーダーの整備が進んだ。
JR東日本もこれに着目し、余目駅にドップラーレーダーを設置して2007年から気象庁気象研究所と共同研究に着手。2017年に日本海から約2キロ内陸(酒田市黒森)に観測範囲半径30キロのレーダーを新設し、羽越本線五十川~女鹿間、陸羽西線余目~清川間に新レーダーを用いた運転規制を導入した。
2019年11月に観測範囲を60キロに拡大し、運転規制の実施区間を羽越本線今川(新潟県村上市)~西目(秋田県由利本荘市)間に延長。さらに2020年度にはAI技術を活用して、渦の探知精度を向上するシステムを開発するなど機能を拡充していった。
同社によれば、2024年度(2024年11月~2025年3月)にドップラーレーダーを用いて行った運転規制は23回で、実際に突風の原因となりうる渦が発生したのは19回、的中率は83%だった。同社は着実に成果を見せるドップラーレーダーを今後、他線区にも拡大する方針だ。現時点では具体的な候補地は明かせないが、研究開発を進めているという。
全国津々浦々さまざまな地域を日々走る鉄道は、自然という強大な相手と戦い続けなくてはならない。尊い犠牲のもと生まれ、運用開始から9年を迎えるドップラーレーダーが、その大きな武器となることを願いたい。







