「まさか、孫に贈与して損するなんて…」相続税の怖すぎる落とし穴とは?
本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。2024年から始まった「贈与税の新ルール」等、相続の最新トレンドを著書『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋し、お届けします。
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「まさか、孫に贈与して損するなんて…」相続税の落とし穴とは?
本日は「相続税と孫」についてお話をします。年末年始、相続について家族で話し合った方も多いかと思います。ぜひ参考にしてください。
贈与税のルールを確認!
贈与税の計算方法は、暦年課税制度と相続時精算課税制度の選択制とされています。
暦年課税制度とは、普段からよく聞く、「年間110万円まで非課税で、超えた部分に贈与税の税率をかけて贈与税を計算する」といったオーソドックスな贈与税の計算方法です。暦年課税という名前のとおり、贈与税はその年の1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与を合計して計算します。
一方で、相続時精算課税制度とは、「贈与するときは最大2500万円まで贈与税を非課税にするが、贈与した人が亡くなったときは、過去に贈与した財産をすべて相続財産に持ち戻して相続税を計算する」という贈与税の計算方法です。この制度は、60歳以上(※)の父母、祖父母から、18歳以上(※)の子や孫などに対して行う贈与に使うことができます。(※贈与する年の1月1日時点の年齢)
2024年1月1日以降、相続時精算課税制度を選択した場合、年間110万円までの非課税枠が新設されるので、年間110万円までの贈与は非課税となり、申告義務も無くなりました(選択した年は、選択の届出が必要)。さらに、将来相続が発生したときに、非課税枠内で贈与した分は相続財産に足し戻さなくてもよいこととされましたので、年間110万円までであれば完全に非課税にできます。
ポイントは「誰に贈与するか」
暦年贈与のままでいいのか、相続時精算課税に切り替えるべきか。このテーマで迷ったとき、制度の特徴を暗記するより先にやるべきことがあります。それは「誰に贈与するのか」を決めることです。
というのも、暦年課税でいちばん効いてくる“相続開始前の贈与が相続税計算に戻ってくる(加算される)”という話は、相続や遺贈で財産を取得する人が、一定期間内に贈与を受けていた場合に問題になりやすい仕組みだからです。
この『足し戻し(生前贈与加算)』は、“相続や遺贈などで財産を取得する人”が、亡くなった人から一定期間内に受けていた暦年贈与を、相続税の計算に合流させるルールです。ポイントは、贈与税を払っていたかどうかに関係なく対象になり得ることです(ただし、過去に納めた贈与税がある場合は相続税から控除されます)。また、この“一定期間”は2024年改正で段階的に延びており、相続の時期によっては従来の3年ではなく最長7年が意識すべきレンジになります。
孫に贈与して損するパターン
贈与先が孫で、さらにその孫が相続や遺贈で財産を取得しない設計になっているなら、暦年贈与の「足し戻し」を過度に怖がる必要は相対的に小さくなります。逆に、孫が相続人になったり遺贈を受けたりする設計なら、当然話は変わります。ここは「孫に渡すから安心」と短絡的に考えず、相続の設計とセットで考えるのが安全です。
一方で、子どもに贈与していく場合は、時間がそのまま損得に直結します。暦年課税は、一定期間を超えられれば、贈与した財産を将来の相続税計算から外しやすくなるという“時間の味方”ができます。
だから、まだ年齢的に余裕があって、長期戦が取れる見通しが立つなら、暦年課税で基礎控除の枠を超える贈与をあえて行い、贈与税を払ってでも将来の相続税を軽くする、という発想が現実的になります。贈与税を払うこと自体が損に見えても、相続税の負担を下げられるならトータルで得になるケースがある、という考え方です。
逆に、年齢や健康面などから「一定期間を超えられるかが読みにくい」となると、暦年課税の強みが出る前に相続が来てしまうリスクが上がります。そういうときに“安牌”として選ばれやすいのが相続時精算課税です。相続時精算課税は、毎年の非課税枠を使いつつ、枠を超えた部分も含めて最終的に相続時にまとめて精算する、という割り切りができます。
重要なのは、暦年か精算かは「どっちが絶対得か」ではなく、「誰に」「どれだけ時間を味方につけられるか」で得が入れ替わる、ということです。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)







