豪農、という雰囲気の家の間に、昭和が色濃く残るアパートが建っているかと思うと、突然、パワービルダーが建てたであろう細長い家が何軒か連なる。元号であれこれ区切るのは案外意味の無いことと思いつつ、昭和と平成と令和がパッチワークのように並んだ景色を眺めながらひたすら歩いた。

 途中、またしてもヤングなパッセンジャーで満ち溢れたバスに何台も遭遇したが、道すがら学生さんたちが馴染めそうな居酒屋が全然無いのが不思議だった。あの人たちは、どこでコンパをするのだろうか。

 そんなフレッシュな雰囲気いっぱいのバスが通る大通りから、途中細い道に入ると、急に街灯が減った。家の表札を見ると、町田市ではなく相模原市になっている。いつの間にかアクロス・ザ・ボーダー……シティポップのような惹句が思い浮かびほくそ笑む。

 それにしても暗いので、私が

「なんとなく奈良の夜を思い出しました」

 とつぶやくと、Mさん(編集部注/担当編集)が

「サガミナラ」

 と、どう料理していいのかわからないことを言った。おそらく疲れているのだろう。できれば、途中に酒屋でもあれば、そこで一杯やって、フライング・ロビンソンと洒落込んで2人して目を覚まそうと思ったものの、あたりには酒屋どころかコンビニもなかったのであった。

絶望の先にたどり着いた
ロビンソン酒場

 が、ぬばたま、の三歩ほど手前程度に暗い道はそれほど長くつづかず、案外、といってもすでに20分は歩いていたが、大通りに出た。信号があって看板には

「二本松」

 と、ある(こういう信号機にくっついた看板は交差点名標識と呼ぶらしい)。ここまで来たら、もうすぐだ。それまで疲れ切っていた私たちは、看板を見た途端に元気をとりもどし、薬局の店先に立っていたオレンジ色の象の像を撫でては、

「酒場はもうすぐだゾウ」

「こら、ソウゾウしいゾウ」

 などと、正統派のオジサンらしさを爆発させながらいそいそと進んだ。そして、ほどなくして現れたのが、

『大衆居酒屋 さつき』

 なのであった。