居心地の良い酒場で
底無しの食欲が爆発

 カウンターはほどよい高さに設えられていて遮るものもあまりなく、厨房の様子も手に取るようにわかる。サラダをつまみながら、しおらしく血糖値を気にする素ぶりをしつつ國弘さんの様子をうかがうと、ステンレスのバットにぷりんぷりんのエビがのっている。

 ふと横を見ると、いい顔で呑んでいる常連さんが、短めの棍棒みたいなエビフライを食べているではないか。Mさんと私は無言でうなずき、声をそろえて、

「エビフライ」

 抵抗できるわけがない。ついでに馬刺と厚揚げもお願いした。もう底無しの食欲である。

 料理を待つ間、店のなかをあらためて眺めていた。

 どうしてこうも居心地が良いのだろうか。家族経営だからというわけでもない。案外ギスギスした家族経営の店なんて珍しくないものだ。この店の居心地が良いのは、関係が良好な家族が経営しているからだ。

「ああ、おいし」

 厨房で私が注文した焼酎を注いだ國弘さんは、こんどは自分でも一杯やっている。最高だ。

 そしてついに、目の前にエビフライがあらわれた。その太さ、ちょっとしたグローブの親指部分くらいのサイズだ。細かなパン粉が見事な狐色に染まっている。自家製のソースをトロリとかけて、熱いのもいとわず、ガブリといく。ほんのりと上品な甘さのあるエビの身はむちむちの歯触り。薄い衣と密着したところに脂の旨みもくわわり、香ばしさと旨みが最高の状態で同居する。ソースのほどよい塩味が、さらにエビの持つコクを引出す。恍惚としてくる。

 一息ついて、壁を見ると、あんちゃんが三味線をひいている写真がある。実はあんちゃん、津軽三味線の伝説の名手、高橋竹山の弟子、竹音に師事した弾き手で、地元の祭りなどで大活躍しているのだ。

旨くて安くて
居心地がいい

 しかし、どの駅から歩いても20分以上かかる場所だというのに、驚くほど大盛況である。常連からよほど愛されているのだろう、店が主催するバスツアーなどもあって、そちらも満員御礼らしい。