「えっ、広尾だよね…」都心ど真ん中にポツンと“陸の孤島”酒場、門外不出の絶品メニューに声を上げたワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

駅や繁華街から遠く離れたところにポツンと孤島のように存在する酒場のことを、イラストレーターの加藤ジャンプ氏は、ロビンソン酒場と呼んでいる。その定義ゆえに辺鄙な土地にあることが多いが、なんと東京・広尾という都心の一等地にもロビンソン酒場が存在するのだという。加藤氏が担当編集とともにそのお店に行ってみた。※本稿は、イラストレーターの加藤ジャンプ『ロビンソン酒場漂流記』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

都心の一等地にある
ロビンソン酒場

 広尾にロビンソン酒場がある――

 毎度サングラスをかけて待ち合わせ場所にあらわれる担当編集Mさんが、おかしなことを言い出したのである。

 そもそもロビンソン酒場とは、およそ商売むきでない土地でどういうわけか長く続いている酒場のことである。言い切ったけれど私がそう呼んでいるだけですが。

 駅からは遠い。まわりに繁華街はない。それなのに愛され続けているのには、商売の秘訣と土地の歴史、店主と客の物語とおいしいものが必ずある。それは街という海に浮かぶ孤島であり、そこには、ロビンソン・クルーソーさながらに生きる知恵がつまっている……。で、いきおい、そういう店は東京のど真ん中にはなかなかない、はずなのだけれど……

「ねえ、Mさん、広尾はあまりに都会ですよ」

「そう、あまりに都会ですなあ。砂漠ですなあ」

 Mさん、困惑する私をいたぶるようにニヤついた。

「そんなところに、ロビンソン酒場があるんですか」

「あるんです、ほら」