エビフライで陶然としていたところに馬刺と厚揚げもやってきて、これが、またしても旨い。この店はかつて『魚とお肉の店』と謳っていたが、それも納得。馬刺もさっぱりしつつも旨みがたっぷり。厚揚げも大豆の素朴なコクと、巧みな揚げ具合で、最高に旨い。
幸せだ。
『ロビンソン酒場漂流記』(加藤ジャンプ、新潮社)
ここでちょっとしたミラクルがおこった。國弘さんが「旨い」と太鼓判を押したエイヒレをカウンターの客全員が注文しモグモグ揃って食べたのである。私もそのうちの1人。なんたる一体感。サンタナの『ブラザーフッド』という曲を思い出した。連帯こそ平和だ。パックス・エイヒレだ。
旨くて安くて居心地がいい。だから繁盛するのは当然なのだろう。だが、店のある通りには、ぽつぽつと店はあるものの贔屓目に見てもそれほどにぎわっている様子はない。大繁盛でいいですね、と言うと、國弘さんは、このときばかりは真面目な顔でこたえた。
「他の店が無い、競争が無いといいと思う人もいるけどね、ほんとうは同業がいっぱいあるほうがずっといいんだよ。いろんな店がなくちゃだめなの。そのなかでお客さんは選んで来るんだし、お店もがんばるんだよ」
勝ち組、なんて言葉を小学生でも口にするような世の中で、なんだかしみじみとしてしまった。この店が愛されつづける理由は、こういうところにあるのだろう。帰り道、思わず二本松の不動産情報をスマホで調べてしまった。家の近くに、こんな店があったら、最高だからだ。







