「幸せだ…」駅から20分、コンビニもない道を歩き続け、絶望の先にたどり着いた居酒屋で起きた「エイヒレの奇跡」写真はイメージです Photo:PIXTA

駅や繁華街から遠く離れたところにポツンと孤島のように存在する酒場のことを、イラストレーターの加藤ジャンプ氏は、ロビンソン酒場と呼んでいる。今回は、神奈川県相模原市にあるお店を訪問。お店の名物であるプリプリのエビフライに舌鼓を打つ加藤氏と担当編集を驚かせた「ミラクル」とは?※本稿は、イラストレーターの加藤ジャンプ『ロビンソン酒場漂流記』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

相模原市二本松という
トラッドな雰囲気の漂う地名

 私が最後にそのロビンソン酒場に行ったのは、たぶん学生のころである。法政大学の学生さんに恋をしたとか、そんなロマンチックな話は一切なく、ほかに何か理由もあったような気がするが、基本的には生来のプチ放浪癖でなんとなく相原駅で下車してしまって偶然見つけた店だった。

 当時はスマホもガラケーすらも持っていなかったから、ほとんど遭難に近い状況で見つけた、その店のことは忘れようもなかった。住所もおぼえている。相模原市二本松という、とてもトラッドな雰囲気の漂う地名だった。

 どんな酒場を訪れるときも私はなるべくスマホを見ないようにしている。酒場をさがすときくらい、人は機械ではなく勘に頼りたいではないか。呑兵衛の勘ほどあてにならないものはないとは承知している。それもふくめての酔狂なのである。

 相原駅の西口から南西に向かったところに件のロビンソン酒場はある。道はほとんど平坦だ。古い家と新しい家が混在するのは、ベッドタウンによく見られる光景だ。かつては農家と農地と山林だったのが、徐々に開発され宅地が造成されていったのだろう。