1月3日、首都カラカスでベネズエラのマドゥロ大統領と故チャベス大統領の写真を掲げる支持者たち Photo:Jesus Vargas/gettyimages
米国はベネズエラを「解放」したのか、それとも「管理下」に置いたのか。マドゥロ大統領拘束後、ロドリゲス暫定政権が発足したが、市場や外交の関心はすでに次の局面に移っている。米国のトランプ政権の狙いは、ベネズエラの超重質油という扱いにくい資源を「当面使える形」で押さえることだったのではないか。国家再建や長期占領には踏み込まず、敵対勢力を排除したうえで、資源と制裁秩序だけを組み替える。それが、今回の介入ににじむ米国の「新しい現実主義」である。米国の新しい現実主義の“序章”ともいえるベネズエラ攻撃による原油市場や各国企業への影響を探った。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
世界最大の埋蔵量も“重い”原油
近づいた中・ロ・イランを分断?
2026年初頭、米軍のベネズエラへの限定的な軍事行動によってニコラス・マドゥロ大統領は拘束され、国外に移送された。最高裁判断を根拠に、副大統領だったデルシー・ロドリゲス氏が暫定的に政権を引き継いだ。だが国際社会の関心は、「民主化が進むかどうか」にはない。焦点は、米国がどこまで介入し、何を回収し、どの段階で手を引くのかに移っている。
ベネズエラは、米国の「新しい介入モデル」を読み解くためのケーススタディーとなりつつある。新しい介入モデルとは、イラク戦争やアフガニスタンのような従来の占領型介入とは大きく異なる。政権中枢の排除と、エネルギーと制裁の流れを米国主導に戻すことにとどめ、国家再建や民主主義の定着には責任を負わない。必要なのは、敵対勢力を排除し、資源や制裁の流れを握る、そしてコストが跳ね上がる前に手を引く――この3点に集約されるといえる。
ベネズエラは約3000億バレルという世界最大級の確認原油埋蔵量を持つ。しかし、その大半はオリノコ・ベルトに広がる超重質油だ。常温ではアスファルトに近い粘度を持ち、単体では流通も精製もできない。商業利用には、軽質油やナフサによる希釈、あるいはアップグレーダー(改質装置)による処理が不可欠となる。高度な技術と安定した投資、外部からの希釈剤供給の三条件がそろって初めて、地下資源は「使える石油」に変わる。
国営石油会社PDVSAは、チャベス政権以降の過度な国有化と政治介入により、それらを次々に失った。技術者は流出し、設備投資は止まり、生産量は1990年代のピーク(日量300万バレル超)から、現在は約100万バレル規模にまで落ち込んだ。自力で石油産業を回せなくなった結果、PDVSAが組み込まれていったのが、ロシア・中国・イランによる制裁回避型のエネルギーネットワークだった。米国の介入はこのネットワークを西半球から排除する狙いがあったのか。次ページで国際原油市場への影響や関与する米石油メジャーや日本企業への影響を探った。







