「別れたの?」「縁起でもない」

 その頃、階下の秘密のレストラン(秘密ぽいが窓が2面もあって、外からわかる設計だと思う)で、錦織がヘブンに、庄田という人物が自分の代わりの英語教師候補だと打診している。ヘブンは「いいですね」と好印象。

「庄田さん、上にいますよ」と山橋(柄本時生)が気を利かせるが、なぜか錦織は遠慮する。

 ボーンボーンと不穏な時計の音。

 トキとサワが1階の店舗で別れたときと同じ時計の音だ。トキとサワ、錦織と庄田、それぞれの関係に何かあると思わせるちょっと耳に残る音である。

 トキはサワが気になって川の向こうに会いに来る。

 新作(立野空侑)と久作(上山就暉)が「先生と別れたがね?」と絡むが「縁起でもない」とトキがあしらう。

 祖母タツ(朝加真由美)と勘右衛門(小日向文世)が結婚して引っ越しても、新作、久作はまだこの地にいるのかと思うと、筆者はなんとも言えない気持ちになる。しかも彼らはクレジットに役名がいっこうにつかない。新作、久作という名前がついているにもかかわらず。なぜだ! 世の理不尽さを嘆かずにはいられない。

 閑話休題、サワの家からキヌ(河合青葉)が出てきて「(サワは)今日は遅くなるみたいでね。このごろいつも遅いんだわ」と言うが、トキは部屋の奥に隠れたサワの足をみてしまう。

 伝言を聞かれ「何を言いに来たのか」と思考が止まってしまうトキ。

「ただ……応援しちょる」とだけ言って去る。

 子どもたちにスキップしようと誘われるが、軽やかに跳ねることができない。

 トキの作り笑顔がとても悲しい。

 川のこっち側は理不尽や悲しいことばかり。でも次週予告では「間違いなく恋よ」とやっぱり、庄田とサワの関係を示唆していて、第17週はいいことあるだろうか。

 それにしたってなんでこんなに切ない話に。制作統括の橋爪國臣さんはトキに対してサワとなみの境遇に関してこのようにコメントしている。

「サワはもうひとりのトキだと思うんです。トキとサワは幼馴染(おさななじみ)で同じような境遇に生まれ育ちましたが、選んだ道の違いによって、それぞれ様々(さまざま)な苦しみや希望がある。その対比によってそれぞれの道の良いことや悪いことを描きたいと思いました。

 サワがトキを訪ねていって花を捨てたり、トキがサワを訪ねていくと居留守を使ったり、あんなに仲良かったのにこんなふうにすれ違ってしまうのはつらいですよね。でもサワの人生もこれから先、花開くといいなと思っています。

 トキはこれまではどちらかというと自分で道を切り開いていくほうではなく、周りに流され、様々な運命が重なりながら生きてきました。サワはなんとか自分で切り開くでしょう。それぞれの生き方の違いで、道が変わってしまって、昔の幼馴染のようには戻れないとしても、でも心は繋がっているというようなことを描きたいと思いました」

「なみは遊郭に売られて以来、長い間、当時の、悪く言えば最底辺、言い方を変えればセーフティネットのない環境下で生きてきました。にもかかわらず、決して暗くならず、状況を受け入れて明るく前向きに生きてきた。そういう人物として描けたらいいなと思っていました。

 なみは完全にオリジナルのキャラクターで、将来的になみを遊郭から出したいという思いもありましたが、どうするのがいいかわからず、どうすればいいだろうとずっと話をしていました。さとうさんはご自身の役の行く末がわからないまま演じていたので、途中で『どうなるんですか』と質問されたこともあります(笑)」

 トキもサワもなみも悲しい目にあってほしくないけれど、全員川の向こうで幸せになりました、めでたしめでたしという描き方にはひと工夫しないといけないから物語を作るのは難しいものだなと筆者は思う。