チームのメンバーや部下とのコミュニケーションを円滑にするにはどうしたらいいのか。2万人をみてきたコンサルタント・勅使川原真衣氏は、その方策を著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』で示す。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛する同書から、内容を抜粋・再構成し特別公開する。
「あれ、今なんか変だったな」
職場で、そんな違和感を持つときはありませんか?
会議の場で、数人がすっきりしない顔をしている。
今の会話、ちょっと噛み合わなかった気がする。
笑顔は見せるものの、部下の本音がわからない。
もやっとするなら聞けばいいと思うかもしれませんが、
「わかっているのが当たり前」
「堂々としているのが当たり前」
という圧に押されて、素直な気持ちほど表現できないもの。
ハラスメントへの意識も高まる今、優しい人こそ、この「なんか変」の沼にはまりがちです。
仕事に本音はいらない
そもそも、仕事をする上で「本音」は必要なのでしょうか?
よく「もっと本音で語ろう」と言う人がいますよね。以前そう聞かれたときに私が出した答えは、
「いや、いらない。いらないというか、本音が必要なのではなく、環境の調整のためにお互いが事実を出し合って、解釈をまとめていくことこそが必要」
というものでした。
本音を言い合っても仕事は進みませんし、あけすけな主観は何の解決にも結びつきません。「嫌い」とか「バカ」だというのは、相手のことをジャッジし終わった後の本音なんですね。
現に、「本音で語ろう」と言っている人ほど、人をジャッジ(良し悪しをつけることを)しがちな気がします。
本当は、もっとそれ以前の「ジャッジメンタルになる前のもやもや」を伝えることが大切です。
ジャッジする前に相手にボールを投げる
ジャッジに至るまでの「なんか変だな」をつかまえる。なかったことにせず、たとえば、
「さっきの発言の意図がわからなくて戸惑ってしまい……自分がいかにこの分野に疎いかを突きつけられたような気がして、焦っているんですが……」
など、違和感をテーブルに置くのです。
つまり、本音というよりも、解釈の入っていない「気づき」をそのまま出すということ。
会議で伝えたことに対して部下たちの反応が悪かったときでも、心の中で「こいつらわかってないな」と決めつける前に、
「ちょっと今、反応がなかったから不安になったんだけど」
と、自分が感じたことを素直に口に出してみる。
「今こういうこと思ったんですけど、どうですかね」
「なんか今ドキッとしちゃって言葉が浮かばないです」
などと言うのも有効でしょう。
漠然とした「違和感」が解決できる「課題」に変わる瞬間
そうやって言葉にするのは、ある種のスキルです。ジャッジする手前の「違和感」の状態で、相手にボールを投げるというトレーナブルなスキルなのです。あいまいな「能力」ではなく。
そうすることで、違和感が積もる前に、「私の問題」から「私たちの問題」へと提起できます。
そこから「じゃあ、どうしようか?」と現実的な方策に話が進むのです。
それが、個人の違和感が職場の「課題」へと変わる瞬間です。

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太