世界でシリーズ累計259万部突破のベストセラー『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一さんと、子別指導塾「坪田塾」経営者で、映画化もされた『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(ビリギャル)の著者である坪田信貴さん。ビリギャルシリーズの最新作である『勝手な夢を押しつける親を憎む優等生と、東大は無理とバカにされた学年ビリが、現役合格した話』(サンマーク出版)の発売を機に、約7年ぶりに対談が実現しました。冒頭の話題はやはり、12年ぶりとなるビリギャル最新作について。大いに盛り上がった対談の第1回目をご紹介します。(構成 伊藤理子/撮影 石郷友仁)

佐々木圭一(以下、佐々木):『勝手な夢を押しつける親を憎む優等生と、東大は無理とバカにされた学年ビリが、現役合格した話』、読ませていただきました。勉強の仕方が書かれているんだけれど、受験生向けというよりは「人間が幸せに生きるためのコツ」が書かれているという印象を持ちました。30歳の会社員も読むべきだし、40歳の主婦も、80歳のシニアにも読んでほしい本ですね。
坪田信貴(以下、坪田):ありがとうございます! 嬉しいです。
佐々木:ビリギャルシリーズの出版は久々だと思いますが、どのような思いで書かれたのですか?
坪田:『ビリギャル』を出版したのがちょうど12年前で、干支がちょうど一周したんですよね。
12年前に僕は、一番の問題は教育が科学的に捉えられていないことだ、経験則だけでなく「科学と情熱の融合」が大切だと伝え続けていました。
そして12年が経ち、現在は「科学」が優勢になりすぎているのではないかと感じます。科学的なエビデンスをもとに「学習能力は環境よりも遺伝子の影響が強い」「成功している人はDNAがいいから」みたいなことを喧伝する人が増えてきました。ビリギャルの主人公であるさやかちゃんが偏差値を40上げることができたのも、地頭がよかっただけ、なんていう声も耳にするようになったんです。
教育の現場において、科学的に捉えることはもちろん大切なのですが、情熱との融合ができていない。「この子にこの大学は無理」という理由づけに科学が使われていて、「こんなの思ってたのと違う!」とずっとモヤモヤしたものを抱えていたんです。
『ビリギャル』ではさやかちゃんの例が中心でしたが、n=1の体験談というわけではなく、坪田塾にはもっとたくさん「科学+情熱」で成績アップした子がいるんだよ、一人ひとりにしっかり向き合えばどんどん伸びるんだよ、と伝えたくてこの本を書きました。
佐々木:なるほど…
坪田:一方、近年はAIが一気に人々の生活に浸透しました。AIの本質はパーソナライズ、つまり個人に最適化していくもので、まさに僕が教育現場でやってきたことなんですよね。
近い将来、教育とAIが密接にかかわり、「教育×AI」が掛け合わされるようになるでしょう。僕がこれまでやってきたことを、AIができるようになるはず。それについても、本を通して伝えたいと思ったんです。
佐々木:AIが本格的に普及したのは、この2~3年ぐらいですかね。特に2025年に一気に一般化したような感があります。
本の中ではAIを活用した教育法について触れていますが、本の登場人物である子どもたちは実際にAIを使っているんですか?
坪田:登場人物のモデルになった子は、使っていないですね。でも足元で言えば、坪田塾ではすでにAIを導入し始めています。
12年前は、子どものスマホ使用が問題視されていて、「スマホ封印太郎」というスマートフォン封印グッズを監修したこともあるのですが(笑)、今はAI含め、子どもからスマホを切り離すのではなくうまく活用する時代に変わってきたと感じます。時代の流れによって、その都度必要なことは変わるのだということも伝えるべきだと思い、「書かなければ」という使命感を覚えました。
佐々木:この本の登場人物となる子どもたち5人は1年で劇的な成長を遂げますが、それぞれモデルがいるんですよね。
坪田:もちろんいます! よく「そんなに急激に成績が伸びる子はごく一部で、100人いたら1人2人ぐらいの話でしょ」などと言われるのですが、うちでは7~8割はそうです。1年で偏差値が20も上がるなんて奇跡的なことですが、その奇跡が7~8割の子どもに起こる。だからモデルは山ほどいるんです。でも、この登場人物のように、家庭の事情まで含めて大変な子はそこまで多くはないですけれど。
佐々木:1300人以上の子を見てきた中でのトップオブトップの話なのかと思っていました。7~8割とはすごい! その中から、家庭環境含め印象的な子をモデルにしたのですか?
坪田:そうですね。親が何度も乗り込んでくるようなケースはそうそうないけれど、似たような事例はたくさんあります。
あとがきでも紹介しましたが、真夜中にお母さんから「子どもが家出した」と連絡があり、一晩中自転車で探し回ったら、防空壕に一晩中いたらしく、明け方に泥だらけで出てきた子がいたり。「ベッドがあるから寝てしまうんだ!」と言って息子がベッドを解体し始めた、先生どうすればいいでしょう? とやはり真夜中に電話があったり。いずれの案件も、普通は塾に相談することじゃないと思うのですが(笑)、本当にいろいろな子がいて刺激的ですよ。
佐々木:ええ! じゃあ部屋で自分の髪の毛をザクザク切っちゃった女子の話もリアル?
坪田:そうです。この子だけでなく、黒髪で清楚系女子だったのに、ある日急に髪の毛を7色に染めてきた子もいますし…ああ、色々思い出してきた!
佐々木:もはや一般的に言われるような塾の先生じゃないですね(笑)。
坪田:勉強を教えるだけだったら、みんなここまで伸びないのかもしれません。さまざまな関係性の中で人は悩み苦しむものなので、ここまで深く介在しないと、根本原因の解決にはならないんだと思います。
佐々木:この本は前回の『ビリギャル』とは一味違いますね。私はコピーライターだから、本を読むときも言葉一つひとつに興味を持って読み進めるんですが、今回は描写がリアルで、情景がすぐに頭に浮かびました。
坪田:これは編集者である黒川精一さんと池田るり子さんの力が大きいですね。例えば、「○○さんは嬉しい」と書いたら、そんなこと書くなと。「嬉しい」という事実を描写によって見せるのが作家なんだと注意されて。小説家ってこんなに大変なんだ! と驚きました。
佐々木:じゃあ、書き上げるのにすごく時間がかかった?
坪田:それが、書き始めてからはあっという間で、1週間ちょっとぐらいかなあ。
これも編集者のプロデュース力がすごいんです。この本にはモデルとなる子どもたちがいるから、みんなに迷惑を掛けないような描写を考えなければならない。そこに難しさを感じて、なかなか書き始められなかったんです。
そんな中、池田さんに「映像シーンをイメージしながら書いてみてはどうですか?」と言われ、シーン1、シーン2…と映画の脚本を書くつもりで書き始めたら、どんどん書けるようになったんです。
嬉しかったのは、シーン1を読んだ編集者さんに「グッときました!」と言ってもらえたこと。まだ素案のペラペラな状態のものだったのですが、「グッとくるのが大事なんです! これに肉付けしていきましょう!」と言ってもらえて。そこからはスムーズでした。
佐々木:それはすごい! 1年半ぐらいかけて書いたのかと思っていました。
坪田:いや、準備にはそれぐらいかかったと思います。旅行中や出張中にもPCを持ち歩いて、夜書こう! と意気込むんですが…つい寝ちゃう(笑)。まだ2行ぐらいしか書いてないのに、「執筆は順調です!」と伝えてごまかしたりして。出版社にはゆとりのあるスケジュールを組んでもらっていたのにね…「宿題ができない!」という子どもたちの気持ちがよくわかりました(笑)。
佐々木圭一(ささき・けいいち)コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師
新入社員時代、もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。連日、書いても書いても全てボツ。当時つけられたあだ名は「最もエコでないコピーライター」。ストレスにより1日3個プリンを食べる日々をすごし、激太りする。それでもプリンをやめられなかったのは、世の中で唯一、じぶんに甘かったのはプリンだったから。あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書はその体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。本業の広告制作では、カンヌ国際広告祭でゴールド賞を含む3年連続受賞、など国内外55のアワードに入選入賞。企業講演、学校のボランティア講演、あわせて年間70回以上。郷ひろみ・Chemistryなどの作詞家として、アルバム・オリコン1位を2度獲得。「世界一受けたい授業」「助けて!きわめびと」などテレビ出演多数。株式会社ウゴカス代表取締役。伝えベタだった自分を変えた「伝え方の技術」をシェアすることで、「日本人のコミュニケーション能力のベースアップ」を志す。
佐々木圭一公式サイト:www.ugokasu.co.jp
Twitter:@keiichisasaki
坪田信貴(つぼた・のぶたか)坪田塾塾長
累計120万部突破の書籍『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称ビリギャル)や累計10万部突破の書籍『人間は9タイプ』の著者。これまでに1300人以上の子どもたちを子別指導し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。大企業の人材育成コンサルタントもつとめ、起業家・経営者としての顔も持つ。テレビ・ラジオ等でも活躍中。趣味は妻と子どもと遊ぶこと。東京都在住。








