労働力人口の減少を受け、多くの企業において人手不足が深刻化しています。新規採用がうまく進まず、社員一人当たりの業務量を増やして対応せざるを得ない企業もあるようです。
毎日激務でしんどく、上司に一言モノ申したい!と考えている人もいるかとは思いますが、業務が多いとの不満をそのまま伝えてしまうと、やる気がないのだろうかとネガティブに受け止められ、場合によっては「この部下、使えない…」と失望されてしまうかもしれません。
そこで、日本、中国とも100万部超、世界でシリーズ累計259万部突破のベストセラー『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一さんに、上司への上手な「伝え方」を教えてもらいました。(構成/伊藤理子)

業務量が多いので減らしてもらえませんか?
新年度を機に、仕事内容が変わったり、役割が変化したりした人も多いことでしょう。人事異動で新しいメンバーが加わり、OJTや業務の引き継ぎなどに追われている人もいるようです。
仕事がデキる人、大きな期待をかけられている人ほど仕事が集中すると言われますが、いくらデキる人であっても、あまりに業務量が多いと疲弊してしまい、思うようなパフォーマンスも上げられないでしょう。
ただ、ストレートに「業務量が多いので減らしてほしい」と上司に訴えるのは、必ずしも好手とは言えません。もちろん、部下の意見を聞き入れ、すぐに対応してくれる上司もいるとは思いますが、「みんな忙しいからどうしようもないのに、自分だけ配慮してほしいだなんて、自分勝手で使えないやつだな」などと思われてしまう恐れもあります。
では、どのように言えばいいのか。例えばこのような伝え方が考えられます。
◎「一つひとつの業務のクオリティを上げたいので、業務量を相談させていただけないでしょうか」
これは、伝え方の技術「相手が好きなこと」を使った伝え方です。上司からすれば、部下が業務のクオリティを上げてくれるのは「好きなこと」です。好きなことをベースに伝えれば、「今よりもクオリティが上がるならば、少し業務量を調整したほうがいいかな」と要望を前向きに受け止めてくれるでしょう。何なら「じゃあ○○の業務は自分が引き取るよ」などと言ってくれるかもしれません。
伝えたいことはどちらも「業務量を減らしてほしい」ということ。しかし、前者は「自分勝手で仕事ができない」とネガティブに受け取られる恐れがあるのに対し、後者の伝え方は「クオリティアップのために頑張ろうとしてくれているな、やる気があるな」というポジティブな印象を与えます。
このように、伝え方の技術を使ってほんの少し伝え方を工夫するだけで、上司の印象はもちろん、評価や査定も大きく変わる可能性があるのです。何か通したい要望があるときは、上司の「好きなこと」を想像しそれに沿って伝えると、好印象を与えつつ要望が通る確率をグンと上げることができますよ。