量子コンピュータが私たちの未来を変える日は実はすぐそこまで来ている。
そんな今だからこそ、量子コンピュータについて知ることには大きな意味がある。単なる専門技術ではなく、これからの世界を理解し、自らの立場でどう関わるかを考えるための「新しい教養」だ。
『教養としての量子コンピュータ』では、最前線で研究を牽引する大阪大学教授の藤井啓祐氏が、物理学、情報科学、ビジネスの視点から、量子コンピュータをわかりやすく、かつ面白く伝えている。今回は量子コンピュータの性能について抜粋してお届けする。

【できる? できない?】スーパーコンピュータと量子コンピュータの性能差は簡単に比較できるのか?Photo: Adobe Stock

グーグルが量子ビットを進化させる

グーグルは、2015年には9量子ビット、2017年には22量子ビットと量子コンピュータのスケールを拡大していった。

単純に量子ビットの数を増やしただけではない。

量子コンピュータの心臓部である量子ビットチップでは、量子ビットの間に量子もつれを作り出すために、量子ビット同士が接続されている。

この量子ビットの接続を、操作しやすい直線的な配置から、量子ビット同士がより量子もつれを作りやすい二次元の格子状配置にする形で量子ビットを増加させたのだ。

エラーを減らす工夫とは?

2018年には、ブリストルコーンと命名された72量子ビットチップが発表された。

しかしこのチップには、量子ビット間の結合が固定されていることに由来するエラー率の高さの課題があった。

量子ビット間の結合が固定され、常にオンになっていると、計算をする必要がないときにも量子ビット達が相互作用をしてしまい、計算エラーにつながる。

この問題を解決すべく結合のオン・オフを調整可能にした新たなチップが、2019年に発表された53量子ビットの「シカモア」だ。

これらの開発に先立って、グーグルは2016年に、「近未来に実現する量子コンピュータを用いた量子超越の検証(Characterizing Quantum Supremacy in Near-Term Devices)」と題した論文を発表している。

これは、NISQコンピュータの一つの目標である「量子超越」を、近々実現されるグーグルの量子コンピュータを用いて検証しようというものだ。

どうやって比較する?

量子コンピュータが古典コンピュータよりも高速であることを示すには、何が必要だろうか?

古典コンピュータでも簡単に解けてしまうような問題であれば量子超越性はなく量子コンピュータの高速性は示せない。

たとえば、素因数分解などの問題であれば、答えの候補さえ与えられれば検算は容易にできる。

そのため、答えが正しいかどうかを検証することは古典コンピュータでも簡単だ。

しかしNISQコンピュータは、そのような複雑な量子アルゴリズムを動かせる規模の量子コンピュータではない。

つまり、近未来的に実現するNISQコンピュータを用いて、古典コンピュータよりも高速に計算していることを何らかの形で実証するためには、適切な問題設定を考える必要があるのだ。

(本稿は『教養としての量子コンピュータ』から一部抜粋・編集したものです。)