量子コンピュータが私たちの未来を変える日は実はすぐそこまで来ている。
そんな今だからこそ、量子コンピュータについて知ることには大きな意味がある。単なる専門技術ではなく、これからの世界を理解し、自らの立場でどう関わるかを考えるための「新しい教養」だ。
『教養としての量子コンピュータ』では、最前線で研究を牽引する大阪大学教授の藤井啓祐氏が、物理学、情報科学、ビジネスの視点から、量子コンピュータをわかりやすく、かつ面白く伝えている。今回は量子コンピュータについて知りたい人のための読書案内を抜粋してお届けする。
Photo: Adobe Stock
量子コンピュータをもっと知りたい人への読書案内
『教養としての量子コンピュータ』を読んで、量子コンピュータや量子力学に興味を持った方へ向けて、さらに探求の手がかりとなる作品や書籍を紹介していこう。
数式を使ったわかりやすい1冊
まず1冊目に紹介するのは、『驚異の量子コンピュータ――宇宙最強マシンへの挑戦』(藤井啓祐著、岩波書店、2019)だ。
『教養としての量子コンピュータ』では量子コンピュータの仕組みについてはあまり深入りしなかった。
多少の数式や図を用いた量子コンピュータの解説については、私が2019年に執筆した本作を読んでいただきたい。
コンピュータの歴史を含め、2019年の量子超越に至るまでの量子コンピュータの発展についても詳しく触れている。
『教養としての量子コンピュータ』で扱った2019年以降の発展を踏まえて読むと、当時からの変化と継続の流れがより立体的に見えてくるだろう。
最初に読む本としてオススメ!
光量子コンピュータの開発に取り組む新進気鋭の若手研究者による『量子コンピュータが本当にわかる!――第一線開発者がやさしく明かすしくみと可能性』(武田俊太郎著、技術評論社、2020)も量子コンピュータに興味を持った人が最初に読む本としてお勧めである。
特に、インターネットやニュースに蔓延る量子コンピュータの誤解を解きほぐし、量子コンピュータの本質や実情について丁寧に解説されている。
著者自身が光量子コンピュータ開発の最前線で研究する立場であり、光量子コンピュータについてここまでわかりやすく記述された書籍は他にないだろう。
量子力学について深く知りたいならこれ!
『量子力学の100年』(佐藤文隆著、青土社、2024)は、量子力学がいかに物理学者を悩ませ、どのように受け入れられてきたか、その紆余曲折と量子情報への発展について、日本を代表する物理学者の深い知識に基づき詳説された一冊だ。
以前、伝統的物理学者の佐藤文隆先生と、量子情報という新しい分野の研究者である私で対談をする貴重な機会をいただいた。
その際、佐藤先生が「これまでは、物理帝国主義という旗のもと、物理学はすべての現象を配下に置き、物理学をもって説明するということをやってきた。一九八〇年代の情報と物理の融合のもと、情報をも物理学の配下に入れようとしたところ、情報学が逆にクーデターを起こし、今では量子力学は一種の情報理論、時空は量子もつれから創発する、などといわれるほどになり、忸怩たる思いである」と語っていたことが印象的である。
『教養としての量子コンピュータ』でも、物質的(モノ)な量子力学から情報(コト)としての量子力学へと思想が変遷してきたことについて述べている。
数学を使ってさらに一歩先へ
『量子コンピュータの頭の中――計算しながら理解する量子アルゴリズムの世界』(束野仁政著、技術評論社、2023)は、量子コンピュータの仕組みを、数学を用いてもう少し腹落ちして理解したいという読者にオススメだ。
高校数学レベルの知識から、行列や確率を丁寧に説明しつつ、量子コンピュータの仕組みや量子アルゴリズムの動作原理を詳細に解説している。
数式は少々きついと感じるかもしれないが、楽譜と同じで多少の訓練を積めば大体の意味が理解できるようになる。
楽譜が読めると音楽をより深く味わえるように、数式を通じて量子力学や量子コンピュータについて、納得感を持って理解できるだろう。
ぜひ、年末年始に量子コンピュータの世界を堪能してみてほしい。
(本稿は『教養としての量子コンピュータ』から一部抜粋・編集したものです。)





