なんのためにリーダーシップが振るわれるのか。その目的を考えることは、リーダーにとって重要なことです。第7回は、2つの軸を提示しながら目標設定のあり方、そしてリーダーの役割について、神戸大学大学院教授で経営組織論、組織行動論を専門とする鈴木竜太氏が、経営学の知見をベースに解説します。本記事は、書籍『リーダーシップの科学』の第1章を一部抜粋・編集したものです。

【リーダーシップ集中講義:第7回】成果につながる「4つの視点」リーダーのための目標設定Photo: Adobe Stock

2軸で考える、目標の定め方

 リーダーが目指す成果についても触れておくことにしよう。すでに述べたように、どのように目標を立てるのか、どうすればより良い目標を定められるのか、といった点はリーダーシップ論の範疇ではない。とはいえ、まず目指す成果から考えるべきだと言っておきながら、その説明を一切省くのは不親切だ。

 ここではリーダーシップの立場から、なんのためにリーダーシップが振るわれるのか(目的)という枠組みを示すことでお許し願いたい。

 まずリーダーシップの観点から言えば、個々人に対して振るわれるリーダーシップと預かる組織や集団に対してのリーダーシップがある。

 一方、これに対し、成果には短期的な成果と長期的な成果がある。この2つの軸で考えると、図のようなマトリクスを描くことができる(図)。

【リーダーシップ集中講義:第7回】成果につながる「4つの視点」リーダーのための目標設定鈴木竜太『リーダ―シップの科学』(ダイヤモンド社、2025年)p.43を引用

 それぞれについて考えていくと、短期的な成果のために個人に対して振るわれるリーダーシップとしては、フォロワーのモチベーションを上げたり、指示を与えたりといったことが挙げられる。これらを通じて今期の目標を達成したり、プロジェクトを進めたりといったことにつながる。

 短期的な成果のために集団に対して振るわれるリーダーシップとしては、役割分担をきちんとしたり、フォロワー間の衝突に対処したりといったことがあるだろう。これらを通じて、効率的に個々人の成果のための行動が集団の成果に結びつくようになる。

 一方、長期的な成果のために個人に振るわれるリーダーシップとしては、学びの促進やキャリアのアドバイスといったことが挙げられる。いずれも個々人の長期的な成長や育成に関わることである。

 そして長期的な成果のために集団に対して振るわれるリーダーシップとしては、組織や職場の将来像やビジョンの提示、新たな事業の推進などが挙げられるだろう。

 これらをリーダーの役割の観点から見ると、短期的な成果へのリーダーシップがいわゆるマネジメントに当たる。個人の長期的な成果へのリーダーシップが育成だ。集団の長期的な成果へのリーダーシップが、変革をリードするということになるだろう。

目標を定めたら終わりではない

 リーダーは、これらの成果を同時に達成していかなければならず、時にそれらの成果の同時追求は難しい。むしろその優先順位やバランスをいかに考えるのかということが、より良い目標を設定する上での要と言えるかもしれない。

 リーダーの大きな役割は、この短期的であれ長期的であれ進むべき方向を定めフォロワーに伝えることである。その上で、その方向へ確実に進むためにリーダーシップが発揮されることになる。

 全7回にわたり、リーダーシップとは何かということについて、リーダーシップ論における定義からスタートし考えてきた。シンプルに言えば、リーダーシップとは、リーダーが何かを働きかけることによって、フォロワーが行動し、それによって成果が出るという一連のプロセスを言う。ただしそれがより良い成果のために使われなければ、良きリーダーにはなりえない。

 そのことを踏まえれば、まず何を目指すのかということが定まって初めて、それをもたらすためのフォロワーの行動が決まり、そのためのリーダーの働きかけが決まることになる。つまり、より良いリーダーシップを振るうためには、因果とは反対の経路で考える必要がある。

 このプロセスを、より深く、解像度高く考えるためにも、リーダーシップ論の知見は活かすことができるのだ。

(本記事は、書籍『リーダーシップの科学の第1章を一部抜粋・編集したものです)