2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』がついに刊行。発売直後に大重版となり、坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

組織の違和感Photo: Adobe Stock

私のことがタイプだったんですかね、と言う後輩

 一つの出来事でも、人によって解釈は180度違うことがある。

 それを強く実感したのは、会社員をしていた頃、後輩と私の解釈がまるで違ったときだ。

 私はとある商社の経理課に所属していた。
 経理課にはいろいろ社外秘のものがある。金庫もあるし、お金関係の資料、顧客のデータなど、外部の人に見られてはならないものがたくさんあるのだ。

 だから、社外の人が経理課を訪れたときは、気を遣わなければならない。

 あるとき、現金と重要な資料とをチェックしていたタイミングで社外の人が来た。
 私は「あっ…」と思ったのだが、後輩はまったく気にせず金庫から現金を出したりしている。

 話を終えた社外の人が去ったあと、「今の人、○○ちゃん(後輩)のほうを見ていたよね」と、注意するつもりで先輩が言うと、後輩はニコニコしながらこう言い放った。

「タイプだったんですかね~!」

 彼女はまったく悪びれる様子なく、「自分が相手の好きなタイプだったので見ていたのだろう」と本気で思っているのだった。

 私と先輩は顔を見合わせた。

 え、ウソでしょ?

何が「普通」なのか?

「あの人に見られていたよ」と言われたら、私は「何か変だっただろうか」と不安になるタイプで、「自分のことがタイプなのね」なんて思いつきもしないから本当に衝撃だったのだが、後輩にとってはそれが普通なのだ。

 いま考えれば、「経理課なんだから、あけっぴろげにしないよう気を遣うのが普通でしょ」と思って丁寧に指導していなかったのが良くなかったとわかる。

 後輩が悪いわけではない。

人はみな違う色のメガネをかけている

 組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏は『組織の違和感』の中で、それぞれの人が「普通」と考えて決めつけていることを「人はみな違う色のメガネをかけている」と表現している。

 普通はこうするでしょ。
 こうするのが当たり前でしょ。

 そうやって決めつけているが、実は同じものを見ても人によって解釈は違っている。
 私と先輩がかけているメガネと、後輩がかけているメガネは色が違ったのだ。

 よく考えてみれば、事実はどうだったのかはわからない。外部の人が後輩を本当に見ていたのか、何を思って見ていたのか。

 それを勝手に、自分のメガネで見て決めつけていただけである。

私たちはつい、自分と違う色のメガネをかけている人を否定したり、非難したりしがちです。なにせ、自分のかけているメガネでしか世の中を見たことがないですし、残念ながら自分では自分のかけているメガネの色に気づけないものですから、自分の「当たり前」で相手を決めつけてしまうのです。

――『組織の違和感』p.51より

 当時、私は後輩のことを「いい子だけど経理に向いていない」と思っていた。これも決めつけだ。

 え、ウソでしょ? と思ったとき、つまり違和感を発見したときは、本来、チャンスだったのだ。自分のメガネに気づき、そして、後輩には「社外の人が来たときはこうしてほしい」と明確に伝えれば良かった。

 本書には、違和感をヒントにして、それぞれの人が能力を最大限に発揮できる組織を作るための考え方が紹介されている。

「普通はこうするのに…」という考えに心当たりのある人に、新しい視点を与えてくれる一冊だ。

(本稿は、『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』の発売を記念したオリジナル記事です)

小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。