2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』がついに刊行。発売直後に大重版となり、坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

組織の違和感Photo: Adobe Stock

すれ違うそれぞれの「普通」

 ベンチャー企業の人事担当として仕事をしている友人が、憤慨していた。
 誰も始業時間前に出社しないという。

 聞けば、業務開始時刻に席には着くそうだ。遅刻しているわけではない。

 しかし、私の友人は、

「普通はもう少し前に来て、机をきれいにするとか仕事の準備をするよね? 私は30分前に行ってオフィスの掃除をしているんだけど、それに対して誰も何も言わない」

 と言って怒っている。

 彼女は能力を買われて、「社員の士気を高めてほしい」ということで入社したのだが前途多難であるようだった。

 私も以前勤めていた会社では「管理部門は始業前に来てオフィスの掃除をし、コーヒーメーカーの準備をする」という暗黙の了解があり、それに従っていたことを思い出した。

「そういうものだから仕方ない」と思ってやっていたが、違和感はあった

 明確な指示をされたわけではなく、当然、その時間の給料は出ない。それはそれでどうなんだろう。

 友人の言う理想は理解できるが、いろいろな考えがあるに違いない。

お互いの言い分に良し悪しはない

 友人の職場では、「始業時間に席に着き、自分の仕事をする」のが当たり前だった。新しい人事担当者が早く来てオフィスをきれいにしていても、とくに何も思わなかったのかもしれない。

 むしろ「そういうの、やめてくださいよ」と思っていたかもしれない(そんな職場の空気を変えるために、友人が採用されたわけだが)。

 どちらにも言い分がある。

 組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏は、『組織の違和感』の中で、職場のすれ違いを取り上げて「お互いの言い分に良し悪しはない」と言っている。

 それぞれの人の「当たり前」が違うだけなのだ。それぞれ仕事を頑張ろうとしているのに、自分の「当たり前」からはずれるから「ちゃんとしていない」と思い、溝ができてしまう。

 勅使川原氏は、これまで約2万人の働く人たちと接した経験から、こう言っている。

「ちゃんとしていない人」が職場にいることが問題なのではなく、その職場の「当たり前」「ちゃんと」「普通」が一体どういう言動なのかを言語化できていないことこそが問題だと確信しています。いけしゃあしゃあとそんなあいまいな言葉で他人に評価目線を注ぐのであれば、これらの言葉をどれほど解きほぐし、いろんなメガネをかけたメンバーにわかるように伝えたのか? これこそを振り返るべきです。

 ――『組織の違和感』p.62より

 なかなか厳しい言葉だが、その通りだろう。

「普通はこうするよね?」と言いたくなったら、その職場の「普通」を言語化し、いろいろな考え方をしているメンバーに対して伝える努力をすることが大事なのだ。

 本書はその方法について具体的に教えてくれている。

「話が通じない」と諦めずに、違和感も素直に話し合える組織になったら素晴らしいと思う。

(本稿は、『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』の発売を記念したオリジナル記事です)

小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。