ジミヘンも「加工バキバキ音源」も
いいものはいい!

 筆者は70年代あたりの、まだ揺れがふんだんにある音源を中心に聴いてきた。自身の演奏も、カチッとはしていなかったが「気持ちがこもった」や「グルーブがある」といった点が評価されてきたのであった。

 昔はその空間を丸ごと閉じ込めた一発録りや一発録りに近い録音の珠玉の名盤が数多くあって、例えばジャズ・ソウルの歴史的名盤として名高いマリーナ・ショウの『Who Is This Bitch, Anyway?』(録音1974年)もだいぶテンポは揺れるが、そのスタジオにいる全員がめちゃくちゃ気持ちよさそうにグルーブしてお互いを触発しあっている空気感が伝わってきて、いつ聴いても興奮させられるものである。

 そのほか、人生でもっともたくさん聴いたであろう曲のひとつ、ハービー・ハンコックの『Hang Up Your Hung Ups』(1975)も出だしと最後でbpm(曲の速さ)が15くらい上がっていてまったく別の曲という感じだし、ベースが思いっきりミストーンを出していることでも有名なキャロル・キングの『So Far Away』はアルバム『つづれおり』(1971)ごとよく聴きこんだ。

 そして一番好きなミュージシャンはジミヘン(ジミ・ヘンドリクス)であり、ピッチやリズムのよれでいうとこれでもかというくらいものすごい。

 これらの時代のこの音楽を至上とするなら、現代の修正加工バキバキの、人工物のにおいしかしない音楽はありえないに違いない。あの一発感や張り詰めた感でしか得られない高揚はたしかにある。

 しかし前述の通り、音楽の流行りや良しとされるものは、リスナーの感性とともに時代ごとに変化してきている。

 むろんどの時代にも音楽的趣向は十人十色であっていいはずなので、だから「加工修正廃絶主義」や「生演奏の揺れやヨレこそ至高」という音楽的な趣向を否定するつもりはまったくないが、そういうことを「音楽を深くわかってるふうな自分」をアピールするためのファッションとして主張する人がいたりして(ファーストテイクを「偽物だ」と告発する人とはイコールでない)、そういう人を真に受けて相手にし始めると疲れるので注意していきたい……というのが超超個人的な、私の体験に基づく戒めである。

 だから、一発録り(に近い)音源を血肉にしてきた私は「現代の加工バリバリ音源も、ファーストテイクのなんちゃって一発録りも両方いいよね」と思っているし、音楽に特別造詣が深くなく「いいものはいい!」で楽しんでいるリスナー(この姿勢こそがもっとも健全である)が「ファーストテイクはガチの一発録りでかっこいい!」と盛り上がっている姿も尊いと思う。

 そしてファーストテイクの闇を暴く的な立ち位置で「あんなの修正じゃん」と主張する人も真実の探求者・監視者として重要な存在である。唯一、通ぶってカッコつけるために「生演奏のヨレこそ至高。加工修正はクソ」というポーズをする人が面倒なので、皆さんも注意してください。