ファーストテイクの「一発録り」
実際はある程度修正されている?
ファーストテイクは「一発録り」や「その場の空気の刻印」をうたっているので、「街に流れている修正されまくった音源とは一線を画す、一発録りの原点回帰ですよ」という見せ方をしている。
が、実際はどうかというと、まあアップされているすべての映像がすべて一発録りであんなにうまく行くはずはなく、ある程度編集は施されていると断言できそうである。
歌のトレーニングや制作の現場に携わった経験があれば、その人がどれくらいの基礎レベルを有していてどれくらい歌えるか(ピッチやリズムがどれくらい正確か)は、声の出し方を少し聴けばおおよそ検討がつく。
悟空が「気」の大きさで相手の強さを推し量るようなアレだが、こうした「気」の探知みたいなものはどのプロフェッショナルな領域にもあるものであろう。
で、「この人の基礎レベルならこれくらいリズムとピッチを外してくるだろうな」と予想するもどちらも裏切られて完璧に近い聞こえ方をするので、そこに編集の手が入った形跡を確信するわけである。
リズムは「ちょっとツッコんだ(タイミングが早めになった)からその部分をまるっと0.01秒遅らせよう」といった修正、ピッチはソフトで音を上げ下げ加工してしまう作業でなんとかなる。
こうした修正がファーストテイクにおいてどのように慣例化してきたかはわからない。何しろ修正全盛の時代なので、修正していない音源がアバンギャルドに耳に響くのである。
ファーストテイクの「一発録り」のコンセプトはこのご時世においてアバンギャルドではあるが、実際に完成した音源がアバンギャルドすぎる(たとえばピッチを外しまくっている)とリスナーは興味を持たないor耳が受け付けないであろうから、「アバンギャルドなコンセプトだけど、仕上がりは『ガチなアバンギャルド』ではなく『アバンギャルドふう』」という現在のファーストテイクのあり方は、尖りすぎはしていないがいいとこ取りができていてバランスがいいように思える。
また、修正全盛で完全なピッチとリズムが主流になっているご時世だから、ちょっとピッチ・リズムを外した音源は「歌が下手だ」と炎上する羽目になる。それを危惧したアーティストサイドからファーストテイクサイドに「何卒修正を」という要求があることも容易に想像される。







