以上のことをもって、ファーストテイクにいくらかの修正が加わっていることはほぼ間違いないと考えられる。

 という具合の切り口で、ファーストテイクはしばしば叩かれている。「一発録りのライブ感を気取った偽物だ」というわけである。

 ちなみに屁理屈っぽくはなるが、「テイクは1回:一発録り」でも、そのテイクに編集を無限に加えても「一発録り」である事実は変わらないから、ファーストテイクはどこまでいっても別に嘘はついていない……と言うこともできる。

「一発勝負の緊張感」だけではない魅力
なぜ新鮮でカッコよく聞こえるか

 屁理屈は抜きにして、それも真ではあると思うが、ファーストテイクならではの「生」や「素」に近づけようとしているコンセプトや演出もたしかに存在していて、それらがファーストテイクを魅力的なコンテンツに仕上げている部分があるのも否めない。

「一発勝負の緊張感」だけに頼るのがファーストテイクの良さではない、ということである。

 たとえばボーカルの処理は、コーラスやハモリ、ダブリング(ミスチルがよくやっていたようなメインボーカルの重ね録り)をなくすか最低限にするかにして、ボーカルの素の声に近いものを聴かせる工夫が取られている。

 また、リバーブ(反射・残響音)も最低限である。ファーストテイクではこれは曲にギリギリ混ざるくらいに抑えられていることが多い。

 普段声の加工が強めの音源ほど、ファーストテイクになった時にギャップが大きくて、それが新鮮でかっこよく聞こえる。

 ファーストテイクは、ステーキにソース(人工の加工物)でなく塩(それもただのそこら辺の塩ではなく、ある程度演出・修正などの手がかかっているので、ペルシャの岩塩とか、そこそこ手の込んだ選りすぐりの高級な塩)をかけて食べるような味わい方で、これはひとつの音楽を楽しむお作法として完全にアリではないか……というのが個人的見解である。

 最後に、長い蛇足になるが「一発録りの緊張感」を音楽的にどう見るかについて書いておく。