「経営の神様」はこんな時代に何を言うか
今から28年前、まだ日本の借金が今よりもずっと少なかった時期に、稲盛氏は『文藝春秋』(1997年12月号)に掲載された論文「景気回復への緊急提言」の中で、次のように述べている。
《これまで、日本は企業も個人も何か問題があるとすぐに政府に救済を求めた。海外から強力なライバルが現れると、国内に入って来られないよう政府に依頼した。景気が悪くなると緊急対策を求めた》
《こうしたなにもかも政府に頼る企業や個人が、結果として日本の政府を肥大化させてきたのである。 しかし、現在日本は国の長期債務だけでも350兆円ほど抱えている》
《日本は年収の7倍の借金を抱えていることになる。企業であっても、個人であっても、困ったときに一時的に銀行等から借入れをすることはあろう。しかし、いつまでも借金を続けることはないはずである。もし、債務総額がこれほどの規模になれば、早晩破綻してしまうことは明らかなので、従業員や家族が一致協力して、どのような無理をしてでも、リストラを行ない、支出を減らそうとするのが当然である。
現在の日本にも同じことが言える。日本の国家財政は破綻寸前にあるのだから、政府と国民は一緒になって、歳出の削減に努めなくてはならないはずである。そのことが分かっていながら、まだ国債を発行してでも、公共事業を増やそうというのは、自ら破滅の道を歩むことと同じである》
この提言が書かれた当時、国の借金は約350兆円だった。それが今や1200兆円を超えようとしている。「年収の7倍」どころではない。桁違いの借金を抱えながら、まだ「もっと借金をして景気を良くしよう」と叫ぶ人々がいる。
稲盛氏が生きていれば、烈火のごとく怒ったに違いない。
稲盛氏が示した処方箋は、極めてシンプルだ。そして、シンプルだからこそ厳しい。「歳出の削減」である。
入りを量って、出ずるを制する。これは家庭でも企業でも、経済活動の基本中の基本だ。収入以上に使っていれば、いつか必ず行き詰まる。国だけが例外であるはずがない。







