あなたは、「仕事ができるようになりたい」と思ったことがありますか?
でも、「仕事ができる」とはいったい何を指すのでしょう。
プレゼンがうまいこと? 英語がペラペラなこと? AIを駆使すること?
……残念ながら、これらはすべて「仕事ができる人」の条件ではありません
では、何をすれば「仕事ができる人」になれるのでしょうか?
3万人を分析して「できる人側」になる絶対ルールをまとめた書籍『仕事ができる人の頭のなか』(ダイヤモンド社刊)著者の木暮太一氏に伺いました。

優しいリーダーほど部下の成長を止めてしまう致命的な理由Photo: Adobe Stock

優しいリーダーほど、部下を動けなくしている

近年、「優しいリーダー」が評価される時代になりました。

部下の話をよく聞き、頭ごなしに否定せず、意見を尊重します。心理的安全性を高め、安心して働ける環境をつくっています。

これらは間違いなく、“令和のリーダー”に重要な要素です。

少なくとも、威圧的で、怒鳴り、感情で人を動かそうとするリーダーよりは、はるかに健全です。

ただ、ここで一つ、見落とされがちな事実があります。優しさは、必ずしも人を動かすとは限らないということです。

「寄り添っているのに、動かない」という違和感

研修やコンサルティングなどでサポートに入っている企業のリーダーの方からこんな言葉を聞くことがあります。

「ちゃんと寄り添っているつもりなんです」
「否定しないように、かなり気をつけています」
「本人の考えを尊重しているんですが……」

その一方で、みなさんが抱える悩みはほぼ共通しています。

「部下が動かない」
「判断が遅い」
「いつまでも迷っている」

リーダーの課題として“あるある”ではないでしょうか?

さらには「優しいリーダー」であろうとする人ほど、この状態に陥りやすいと感じています。

なぜでしょうか?

優しさが生み出す「安心して迷える状態」

優しいリーダーの多くは、部下に対して次のように接します。

「無理に決めなくていいよ」
「いろいろ考えてみて」
「どれも間違いじゃないと思う」

これらの言葉は、一見すると部下を守っているように見えます。

実際、部下は気持ちが楽になり、安心するかもしれませんね。否定されないからです。

しかし、その安心は、行動の安心ではなく、「迷い続けてもいい」という安心です。

「決めなくても怒られない」
「動かなくても責められない」
「曖昧なままでも許される」

そして部下は「考え続ける」ようになります。決断と行動を先延ばしにしてしまうのです。

多くのリーダーが、無意識に勘違いしていると感じます。

「相手の考えを尊重できるような優しい人になりたい」
「決めつけないことが、相手の成長につながる」

たしかに、相手の考えをむやみに否定してはいけません。

しかし、「尊重される=どれもいい」ではありません。

選択肢がない状態では相手は動けませんが、それ以上に「選択肢が多すぎる状態」でも動けなくなります。

仕事の現場で必要なのは、「何をやってもいい状態」ではありません

何をやればいいかが分かっている状態」です

選択肢が増えすぎると、人は判断できなくなります。判断できなくなると、行動できなくなります。

これは能力の問題ではなく、環境の問題です。

リーダーがやるべきことは「迷わせないこと」

ここで、リーダーの役割をはっきりさせておきます。リーダーの仕事は、迷いを共有することではありません

迷いを減らすことです。

もちろん、リーダー自身も迷います。正解が見えているわけでもありません。

ただし、その迷いをそのまま部下に渡してはいけません。

「自分はよく分からないから、任せるよ。いい感じに仕上げて」
「正解はないから、自由にやってみよう」

では、部下はより迷うことになります。

「結局、何をすればいいのか分からない」という状態になるだけです。そして実際には、責任の所在を曖昧にしてしまっています。

人は、自由なときに動けるのではありません。暫定案でもいいから自分の中で「これだろうな」と決まっているときに動けるのです。

「何を目指しているのか」
「どこまでやればいいのか」
「どこから先は考えなくていいのか」

これが決まっていると、人は安心して動けます。

優しいリーダーが、もう一段進むために

ここまで読むと、

「じゃあ、厳しくすればいいのか」

と思われるかもしれません。しかし、そうではありません。

繰り返しになりますが、必要なのは「感情的に厳しくすること」ではなく、「構造的に明確にすることです。

「何を期待しているのか」
「何をすれば評価されるのか」
「どこで相談すればいいのか」

これを言語化して示すことが大事です。

これができることが、本当の意味での優しさではないでしょうか?