野球にたとえると分かりやすいでしょう。

 大企業は、強いチームの一員として、整備された球場でプレーできる環境にあります。優秀なチームメイトや十分な設備に支えられ、その中で結果を出してきた人が、中小企業という異なる環境に移ったとき、支えとなる仕組みが十分でなく、自分で課題を見つけそれを解決していかなければならない中で、どこまで力を発揮できるかが問われるのです。

 環境が変わった途端に、「人が足りない」「仕組みが整っていない」と不満を口にし、成果を出せない場合、その仕事の進め方が中小企業の環境に合っていない可能性があります。

「内部志向」の仕事が
評価されやすい大企業

 ある中小企業が、管理部門の強化を目的に、メガバンクの支店長経験者を採用した例があります。経歴だけを見れば十分な実績に見えましたが、期待された役割を果たすには至りませんでした。彼は仕事の進め方を、中小企業の環境に合わせて切り替えることができなかったのです。

 経営者が注意すべきなのは、「大企業で部長を務めていた」「銀行の支店長だった」といった肩書きへの過度な期待です。肩書きは、過去の組織の中で担っていた役割を示すにすぎません。特に、大企業の場合には仕組みがかなり出来上がっているので、ある程度の年功と肩書だけで仕事ができてしまうことも少なくありません。

 本来確認すべきなのは、その人が具体的にどのような課題に向き合い、どこまで自ら考え、行動してきたのかという点です。役職名ではなく、行動事実を見る必要があります。

 経営コンサルタントの大先輩である一倉定先生は、「大企業から来た人は宇宙人」と表現していました。

 大企業では、待っていてもルーティンでのある程度の仕事があり、社内の調整や上司への報告といった「内部志向」の仕事も重視されがちです。分業が進み、権限や責任の範囲も明確なため、自分の担当領域を守ることが評価につながりやすい傾向にあります。

 一方、中小企業では、一人が複数の役割を担い、現場での判断が求められます。何より、お客さまや市場と直接向き合う「外部志向」の姿勢が欠かせません。管理部門に配属される人でも同様です。自分で課題を見つけ出し、解決していかなければなりません。この違いを理解せず、大企業のやり方をそのまま持ち込もうとすれば、軋轢が生じやすくなります。