メリットもデメリットも~AIの意外な判定

 しばらくして、カタリーナのもとに佐藤から再度面談の予約があった。これまでA評価だった部下の池田がC評価となった意外な理由が判明したという。

 それは、AIが関知しにくい「顧客クレーム処理」や「後輩のメンタルケア」といった、データ化されにくい裏方の仕事に奔走していたということだった。AIは「チャット返信が遅い(実はクレーム対応中だった)」、「自席にいない(実は後輩と面談中だった)」といったことを「サボり」と判定していたのだった。

 社内調査で、佐藤以外にも不適切な運用が行われたケースがあることが分かり、人事評価と面談のやり直しが実施されたという。

カタリーナ「AIは過去のデータから傾向を出してくれるけれど、『現場のコンテキスト』という魂を吹き込むのは人間の仕事。AIを使うのはいいけれど、責任まで預けちゃダメよ」

佐藤部長「身に沁みてわかりました。そういえば今回、初めてのシステム導入で興味深いこともあったんです」

カタリーナ「どんなこと?」

佐藤部長「これまで全然評価されてこなかったある女性社員が、AI人事評価にしたら『S評価』に加え、幹部候補にまで推薦されましてね。我々もビックリしています」

カタリーナ「上層部は男性ばかりなんじゃない?人間が無意識に持っている性差バイアスを、AIが取っ払ってくれたからでしょうね。これもAIならではってことかしら」

<カタリーナ先生からのワンポイント・アドバイス>
●労働契約法第3条5項では「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」として権利濫用を認めない。

●AIによる人事評価は、単に「客観的」という理由だけで認められるわけではなく、評価基準の妥当性や評価プロセスの透明性が問われる。AIの評価ロジックがブラックボックス化している場合、評価の根拠を本人に説明できず、合理性を欠くと判断される可能性が高いので注意したい。

※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。

(社会保険労務士 佐佐木由美子)