身に起こることのすべてに
「運」や「偶然」が関係している

 自分の身に起こることがどれも自己責任によるものだと考えるのは、端的にいって間違いです。実際、あまり努力もせず、能力も高くない人が、なぜかトップに気に入られて会社で出世することもあるでしょう。

 同じように飲酒や喫煙などの不摂生をしていても、ある人は重い病気で早く亡くなり、ある人は天寿をまっとうするまで元気に暮らしたりします。これは誰のせいでもなく、「たまたまそうなった」としか思えません。

 だから僕は、自分が生命保険会社で左遷されたときに「自業自得」とは思いませんでした。意見が衝突した僕を左遷したのは、前任者から代わったばかりの新社長です。あのタイミングで社長が交代しなければ、何も問題はなかったでしょう。

 脳出血で倒れて車いす生活になったのも、「ほとんど医者にも行かず、健康に注意した生活を送っていなかった自分が悪い」とは必ずしも思いません。もちろん統計学的には不摂生などが脳出血のリスクを高めることがわかっていますが、それは確率の問題です。「こうすればリスクがゼロになる」ということはありません。

 ですから僕は、自分が左遷や病気という逆境に直面したのは「たまたま」の巡り合わせでしかないと思っています。人間が暮らす環境は、本人の努力や工夫だけでコントロールすることができません。さまざまな「運」や「偶然」が重なって、順境になったり逆境になったりするのです。